さまざまな理由から「筋トレをしよう」と決意したとき、目につきやすい腹筋から鍛えようとする人は多いのではないでしょうか。反対に、背中の筋肉は自分の目から見えにくい場所のため、疎かになりがちです。
背中にある広背筋は、他人の目につきやすい部位であり、鍛えることでさまざまなメリットが得られます。
この記事では、広背筋に効かせる腕立て伏せのメニューを紹介します。広背筋を正しく鍛えて、魅力的な背中を目指しましょう。
広背筋とは?
広背筋とは、背中の中央から腕・腰にかけて広がる筋肉です。形は逆三角形で、下部胸腰部のほとんどを占める平らな筋肉となります。
背中は「広背筋」「僧帽筋」「脊柱起立筋」という3つの筋肉から成り立っています。広背筋の上から覆っているのが僧帽筋で、頭の下から背骨をとおり、腰の上まで続く筋肉が脊柱起立筋です。
上記3つの筋肉は、バランス良く鍛えることが重要です。ただ、広背筋は身体全体の筋肉のなかでも特に大きいため、美しい背中を目指すには効率良く鍛える必要があります。
それぞれ筋肉の役割が異なり、おもに以下のような動きの際に使われます。
- 広背筋:腕を伸ばした状態から身体全体を引っ張る動作
- 僧帽筋:首や肩の動き全般
- 脊柱起立筋:姿勢維持・後ろに反る動作
面積が広い広背筋は、懸垂・ロープクライミング・水泳・格闘技など、多くの場面で活躍する重要な筋肉です。「運動能力を上げたい」という場合は、広背筋をメインに鍛えると成果を得やすくなるでしょう。
広背筋を鍛えるメリット
広背筋を鍛えることによるメリットを解説します。筋力を増やす効果以外のメリットを知り、筋トレのモチベーションアップにつなげていきましょう。
筋トレのメニュー幅が増える
広背筋の筋トレをすると、背中以外の部位も効率良く鍛えられます。例えば、上腕の筋肉・大胸筋・腹筋などです。背中以外に腕の筋肉なども鍛えられることで、今までできなかった筋トレメニューにも挑戦しやすくなります。
バランス良く上半身に筋肉をつけられるのも、うれしいポイントです。筋トレのメニュー幅が増えれば、同じトレーニングに飽きても気分転換ができるでしょう。
基礎代謝がアップする
多くの筋肉で構成されている広背筋を鍛えると、筋肉量が増えて基礎代謝が向上します。基礎代謝が上がると効率良くエネルギー消費ができ、痩せやすく太りにくい身体を目指せます。
基礎代謝アップによって、アンチエイジング効果も得られるでしょう。老廃物の排出が促され、以下のような不調の改善にもつながります。
- 便秘の解消
- 肌質の改善
- 美肌・美髪効果
- 冷え症・肩こり・むくみの解消
広背筋の筋トレには、特に女性にとってうれしいメリットが豊富にあります。
逆三角形になりシルエットが引き締まる
広背筋を鍛えて逆三角形の上半身になると、身体のシルエットが引き締まります。逆三角形のシルエットは、女性ならセクシーに、男性なら男らしい姿に見えます。ピタッとした服でもかっこ良く着こなすことができ、似合う服が増えておしゃれも楽しくなるでしょう。
逆三角形は広背筋そのもののシルエットのため、しっかりと鍛え上げれば簡単に手に入れられます。引き締まった身体になることは、見た目だけではなく健康維持のモチベーションにもつながります。
姿勢が良くなる
広背筋を鍛えることは、姿勢を良くすることにもつながります。背中の筋肉が弱い人は姿勢が悪くなりやすく、猫背は肩こり・頭痛・腰痛・集中力低下に影響します。猫背によって起こる症状に悩んでいる人は、特に広背筋の筋トレがオススメです。
広背筋を鍛えると、真っ直ぐな姿勢を維持できることに加え、長時間同じ姿勢でも疲れにくくなります。ただし、キレイな姿勢を維持できる身体を作るには、腹筋も鍛えてバランス良く筋肉をつけることが重要です。
広背筋を効率良く鍛える腕立て伏せメニュー
広背筋を効率良く鍛えるには、腕立て伏せがオススメです。肩甲骨を寄せる動作を繰り返すことで、広背筋に刺激を与えられるからです。
腕立て伏せは正しい方法でおこなえば、回数をこなさずともしっかり効果を得られます。道具が不要なうえ自宅で手軽にできるため、以下で紹介するメニューを実践してみてください。
膝つき腕立て伏せ
その名のとおり、膝をついた状態でおこなう腕立て伏せです。膝をつくことで負荷が軽くなるため、初心者や筋力の少ない女性にオススメの方法です。
1. 膝を90度に曲げ、床にしっかりつける
2. 肘を曲げ、胸を床まで下ろす
3. 肘を伸ばしてもとの位置に戻る
膝つき腕立て伏せは「かかとが浮かないようにすること」「膝が極端に内側・外側に向かないこと」を注意しながらおこないましょう。
ダイヤモンドプッシュアップ
ダイヤモンドプッシュアップは、手の幅を狭くしておこなう腕立て伏せです。負荷が大きく腕立て伏せ上級編ともいえるため、より刺激を与えて筋トレ効果を上げたい人にオススメです。
1. 両手で三角形を作って親指を合わせるようにして床につける
2. 脇を閉めた状態で、胸を床まで下ろす
3. ゆっくりともとの位置に戻る
手を1の状態にすると、通常の腕立て伏せよりも手の幅が狭くなるため、負荷が強くなります。ダイヤモンドプッシュアップは、広背筋に加えて大胸筋・二の腕にも負荷をかけられます。
ナロースタンスプッシュアップ
手の幅を狭くしておこなう腕立て伏せですが、ダイヤモンドプッシュアップよりも幅は広くなります。「ダイヤモンドプッシュアップがキツくてできなかった」「少しずつステップアップしたい」という人に適しています。
1. 肩から手の位置が真っ直ぐになるように置く
2. 脇を閉めた状態で、胸を床まで下ろす
3. ゆっくりもとの位置に戻る
ナロースタンスプッシュアップのコツは、垂直に手を床に下ろすイメージでおこなうことです。上腕三頭筋も同時に鍛えられるため、腕の筋肉アップにもつながります。
ワイドスタンスプッシュアップ
ワイドスタンスプッシュアップは、手の幅を広くしておこなう方法です。胸部への負荷が増すことから、大胸筋も同時に鍛えたい人にオススメです。
1. 通常の手の位置から、こぶし1~2個分くらい幅を広げて置く
2. 肘を曲げて胸を床まで下ろす
3. もとの位置に戻る
肘を真横に広げるとより負荷がかかるため、慣れてきたら挑戦してみましょう。
リバースプッシュアップ
リバースプッシュアップは、椅子を使った腕立て伏せです。通常の腕立て伏せとイメージが異なりますが、正しくおこなうと上腕三頭筋・広背筋・三角筋をバランス良く鍛えられます。最初は低い椅子から始めるほうが、やりやすいでしょう。
1. 椅子に浅く座って、手はお尻の横へ置く
2. 手で身体を支えながら、椅子から離れる
3. 脚を遠くに伸ばしながら腰を落とす
4. 椅子の前に座るイメージで肘を真っ直ぐにし、もとの位置に戻る
慣れないうちは脚を伸ばさず、90度に曲げると軽い負荷でできるためオススメです。
デクラインプッシュアップ
デクラインプッシュアップは、ほかの筋トレと比較して上級者向けの腕立て伏せです。普通のトレーニングに飽きた人・三頭筋を重点的に鍛えたい人に適しています。
1. 腕立て伏せの姿勢のまま脚を上げて椅子か台の上に乗せる
2. 肘を曲げて胸を床まで下ろす
3. ゆっくりともとの位置に戻る
フォームのポイントは、手の幅を肩幅に合わせることです。正しいフォームでおこなわないと腰を痛める危険性があるため、注意しましょう。なお、椅子・台の高さがあるほど、強い負荷がかかります。腰を極端に反らないようにすることも、重要なポイントです。
インクラインプッシュアップ
デクラインプッシュアップとは反対に、上半身を椅子・台の上に置いておこなう方法です。広背筋と同時に、大胸筋もより強く鍛えられます。
1. 両手を高さのある椅子などに乗せて腕立て伏せの形にする
2. 胸をゆっくり下ろしながら肘を限界まで開く
3. もとの位置に戻る
両手を椅子などの上に乗せたとき、脚は開かずしっかり閉じておくのがポイントです。大胸筋と広背筋が収縮していくのを意識しながらおこなうと、より良いでしょう。上級者はバランスボールを活用すると、高い効果が期待できます。
アイソメトリックスプッシュアップ
肘を曲げた状態でキープさせる腕立て伏せです。腕を上げ下げする動作を繰り返さず、キープするのが特徴です。特に、肘を曲げた状態からもとの位置に戻せない人でも実践しやすい筋トレとなります。
1. 通常の腕立て伏せの姿勢になり、胸を床まで下ろす
2. その状態で10~20秒キープする
3. ゆっくりともとの位置に戻る
慣れてきたら、キープする時間を長くしてみましょう。キープ中は「お尻が上がらないようにすること」「身体が真っ直ぐになるように意識すること」がポイントです。
腕立て伏せで広背筋を鍛える際のポイント
腕立て伏せは、やみくもに回数を重ねれば良いわけではありません。しっかりと効果を得るために重要な、腕立て伏せのポイントを3つ紹介します。
正しいフォームでおこなう
腕立て伏せで広背筋を効果的に鍛えるなら、正しいフォームでおこなうことを意識しましょう。腕立て伏せの最中にキツいと感じてくると、フォームが崩れやすくなります。たとえ自分が楽になるようなフォームでおこなっても、負荷がかからずに効果を得られません。
正しいフォームのポイントは、おもに以下の3つです。
- 腰を反らさない
- 背中を丸めない
- 身体を水平になるように肘を伸ばす
正しいフォームかどうかの判断は自分だとわかりにくいため、人にチェックしてもらうと安心です。
呼吸を意識する
腕立て伏せをおこなう際は、息を吸ったり吐いたりしながら身体を上げ下げしましょう。呼吸を意識することで、筋肉に余分な力が入らずに腕立て伏せができるからです。
腕立て伏せがキツくなってくると、つい呼吸を止めてしまうことが多くなります。しっかりと呼吸をしないと筋肉に余分な力がかかり、腕立て伏せの効果が軽減します。腕立て伏せをするときは、息を吸いながら身体を下げて吐きながら上げることを意識してください。
サプリメントなどを摂取する
効率良く腕立て伏せの効果を得るには、プロテインなどのサプリメントの摂取もポイントです。サプリメントを摂取すると、筋肉の肥大・回復をサポートしてくれるため、腕立て伏せの効果が出やすくなります。
以下の記事で、アスリートを指導する人気トレーナーの山本義徳先生が活用しているサプリメントを紹介しています。
広背筋を鍛える人はストレッチも取入れよう
広背筋を鍛える際は、筋トレに加えてストレッチも併用するのがオススメです。ストレッチは硬くなった筋肉を伸ばし、緊張をほぐしてくれます。筋肉の回復を早める効果も期待できるため、トレーニング後にストレッチする習慣を作っておくと良いでしょう。
オススメのストレッチは、バーを使った方法です。バーを持って背中を広げるようなイメージで身体を落とすと、広背筋が伸びていきます。バーの使用が難しい場合は、グリップなどを使っておこなうのも一つの方法です。
腕立て伏せにストレッチをプラスして、より美しい広背筋を手に入れましょう。
まとめ
美しい広背筋を手に入れるには、正しい方法で効果的なトレーニングをおこなうことが大切です。広背筋のトレーニングにオススメなのは、道具がいらず自宅で簡単にできる腕立て伏せです。
とはいえ、腕立て伏せには多くの種類があるため、自分の筋力・レベルに合った方法から始めることが大切です。筋トレだけではなく、ストレッチもおこないながらバランス良く広背筋を鍛えましょう。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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