筋トレには食事が大切とは言われるものの、どのような食事をすれば良いのか分からない人もいるのではないでしょうか。この記事では、筋肉博士とも呼ばれる山本義徳先生が、筋トレに食事が大切な理由と、食材とオススメのメニューにまでわたって解説します。
筋トレの効果を高める食事のポイント
筋トレとは、いわば筋肉を傷つけるための作業です。高い負荷をかけて傷ついた筋肉は、十分な食事を摂り回復させることで初めて成長していきます。つまりせっかく筋トレを頑張っても、食事がきちんと摂れていないと筋肉を回復させることが出来なくなってしまうため、筋トレの効果も得られないのです。
たくさん食べないと筋肉は増えない
とにかく筋肉を増やしたい人は、多くの量の食事を摂る必要があります。生命維持に必要な身体の機能を維持するだけでも食事は必要不可欠です。ましてや筋肉を大きく成長させたいのであれば、さらに多くの量の食事が必要であることは容易に想像できるでしょう。
1日に消費する分を上回るカロリーを摂取しなければ、筋肉を大きくするだけの材料が足りなくなってしまい、逆に筋肉が分解される働きの方が強くなってしまうため注意が必要です。
多めの回数食べる
摂った食事は消化・吸収を経て、身体を動かすエネルギー源となるグルコースや筋肉の材料であるアミノ酸へと変わり、血液を通って身体中に運搬されます。
筋肉の合成が分解を上回る状態を作る状態を長く保つことで、筋肉は大きくなります。そのためには食事をこまめに摂って、血液中の栄養の濃度が常にある程度保たれた状態にしておく必要があります。
1日に5〜6回食事をとり、できるだけ空腹の状態を作らないようにするのが理想です。
筋トレに欠かせない栄養素!
筋肉にとって、あらゆる栄養素を欠かすことはできません。筋肉の材料となるたんぱく質の他にも必須というべき栄養素を摂取することで初めて筋肉が成長する環境が整うのです。
たんぱく質
筋トレをする人が特に重視したい栄養素がたんぱく質です。たんぱく質は身体のあらゆる部位の材料であり、筋肉もその例外ではありません。
そのため、筋肉量を増やすにたんぱく質が豊富に含まれた肉類・魚介類を中心とした食事を摂る必要があります。
そして山本義徳先生は、筋肉を大きくしたい人はたんぱく質を体重1kgあたり2g以上摂ることを推奨しています。
炭水化物
炭水化物は、コメなどの主食に豊富に含まれる栄養素です。
摂取した炭水化物は体内ではグリコーゲンやグルコースに変わり、体内に貯蔵されて身体を動かすエネルギー源になります。また、筋肉にアミノ酸を運ぶ役割をするインスリンというホルモンは炭水化物を摂取することで分泌されます。
脂質
脂質は細胞を覆う細胞膜の材料であり、細胞の炎症を抑えて正常な状態に保つ役割があります。また、脂質は筋肉を大きくするためには欠かせない男性ホルモンの材料でもあります。
脂質は大きく分けて、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。一昔前までは、飽和脂肪酸は悪玉コレステロール増やしてしまい健康に良くないと言われていましたが、現在ではむしろ飽和脂肪酸は健康にとって必要とまで言われています。
ただし、中には身体にとって良くない脂質も存在します。マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸は人工的に製造された天然には存在しない脂質で、摂りすぎると生活習慣病を招く恐れがあると言われています。
ビタミン・ミネラル
ビタミンとミネラルはエネルギーにはならないため、三大栄養素には分類されません。しかし身体の代謝をスムーズにおこなうためには欠かすことができない栄養素です。そのため機械を動かすための潤滑油に例えられることもあります。
野菜をたくさん食べてビタミンを補いましょう、と一般的には言われます。しかし、山本先生は大の野菜嫌いで有名です。そして野菜から摂ることのできるビタミンの量はバルクアップには十分でないので、必要量のビタミン・ミネラルを補うためにはサプリメントを活用することを推奨しています。
筋トレをする人の必須食材!
筋トレをする人に摂って欲しい食材を、栄養素別に紹介します。
肉・魚介類(動物性たんぱく質)
牛肉
牛肉にはカルニチンと鉄分が多く含まれるのが特徴です。カルニチンは脂肪をエネルギーに変える上で必要になり、鉄分はヘモグロビンの生成や酸素の運搬に関わっています。いずれも筋トレをする上では欠かせない成分です。
・サーロイン
サーロインは、ステーキ用の上質な部位の牛肉として知られています。脂ののった見た目をしており、柔らかい食感で甘みがあります。脂質が豊富なぶん、カロリーが高いことが特徴です。
・ヒレ
牛の肋骨の内側に位置する、一頭からとれる量が少ない希少な部位です。脂肪分が少ない赤身肉でカロリーが低いため、できるだけ体脂肪を増やさずに筋肉をつけたい人にオススメです。
・モモ
牛の脚の付け根に位置する赤身の筋肉の塊です。脂身の部分を取除けば、ほとんどが赤身のため、さまざまな料理に適しています。ローストビーフ用の肉としても、モモ肉はよく使われています。
豚肉
豚肉には、体内で生成することのできない必須脂肪酸のうちの一つである、リノール酸が豊富に含まれています。
・ロース
豚ロースは適度に脂肪がつき、旨味の詰まった人気の高い豚肉の部位です。
・バラ肉
バラは赤身と脂身が層のように重なったジューシーな食感が特徴の部位です。脂身が多くカロリーが高いためバルクアップにはもちろん、糖質を摂らない代わりに脂質を多く摂る必要のあるケトジェニックダイエットにも向いています。
・ヒレ
豚ヒレ肉は、一頭の豚から1kg程度しかとることができない希少な部位です。脂質が少ないながらも、固くない肉質のため美味しく食べることができます。
鶏肉
鶏肉はコストが安く手に入りやすいこともあり、筋トレをする人にとって定番の食材となっています。
・胸肉
筋トレをする人はいつも胸肉を食べているイメージを持つ人も多いでしょう。皮を取除くことによるカロリーの少なさから、身体を鍛える人のダイエット食材として人気です。
・もも肉
適度な脂質とたんぱく質を摂ることができるのが鶏もも肉です。
鶏卵
鶏卵に含まれるアミノ酸の配合のバランスは最も理想的なため栄養価が高いと言われており、これを基準とした「プロテインスコア」という指標が存在します。優れたアミノ酸のバランスに加えて、脂質・ビタミン類を豊富に含むことから完全栄養食とも呼ばれています。
サバ
サバにはEPA・DHAに代表されるオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。EPAには悪玉コレステロールを下げる効果が期待でき、DHAには血液の流れを良くして、脳や神経細胞を活性化させる働きが期待できます。
サバの缶詰はスーパーなどで入手しやすく、持ち運びもしやすいため忙しくて自炊ができない日などにもとても便利です。
サーモン
サーモンは、サバより脂質を抑えられカロリーは少ないですが、良質な脂質を摂取することができます。調理方法のバリエーションも広く、寿司のネタとしても定番です。
炭水化物
米
日本人の食生活に根付いた炭水化物として、やはりご飯が挙げられるでしょう。白米は消化も良く、たくさんの量の米を食べたい人にオススメです。玄米であれば白米で摂れる栄養に加えて、食物繊維やビタミンB群も豊富です。しかし、玄米は食物繊維が多いぶん消化が悪く体質に合わない人もいます。自分の体質に合ったものを取入れると良いでしょう。
小麦製品
麺やパンの原料である小麦からも、炭水化物を摂ることもできます。また、炭水化物だけではなく、体調を整えるアミノ酸として知られているグルタミンも豊富です。グルタミンの名前の由来は、小麦の成分であるグルテンからきています。
脂質
肉・魚類
サーモン・牛肉・豚肉・サバなどはたんぱく質が豊富な食材でありながら、同時に良質な脂質も含みます。
ナッツ類
ナッツには豊富なオレイン酸などの良質な脂質が含まれます。バルクアップ時、あるいはケトジェニック中の間食としてオススメです。
オリーブオイル
サラダなどにそのままかけて食べることもでき、調理用の油としても使える、さまざまな使い方ができるのがオリーブオイルです。
プロセスチーズ
チーズは、脂質を補いたいときの食材としてとても優れています。コンビニなどでも手に入りやすいプロセスチーズは保存が効き、手軽に取入れやすいためオススメです。
筋トレをする人のための食事のメニュー例
筋トレをしている人に必要な食材を摂ることができ、かつ美味しく食べることができる筋トレメニューを紹介します。
ステーキ
筋トレのための食事として、ステーキは欠かせないでしょう。厚く切った肉をそのまま焼く、シンプルでなおかつたんぱく質がしっかり摂取できる嬉しいメニューです。ステーキには牛肉が定番ですが、豚肉・鶏肉・ラム肉・鹿肉などのさまざまな肉の種類によってさまざまなバリエーションがあります。
鮭のムニエル
鮭を使ったメニューにはさまざまなバリエーションがあります。美味しく食べる方法の一つとして、ムニエルがオススメです。バターと油をたっぷり使って焼くことで、香ばしさが加わり、また違った味わいが楽しめます。
オムレツ
卵には上質なたんぱく質が含まれていますが、1個あたり摂れるたんぱく質は約6gで、決して多いとは言えません。例えば30gのたんぱく質を摂りたいのであれば卵を5個食べる必要があります。多くの卵を一気に美味しく食べるにはオムレツがオススメです。
ちなみに山本義徳先生はが現役のボディビルダーだったときには、全卵10個を使ったオムレツが毎日の朝食だったそうです。
ダチョウの卵のオムレツ(番外編)
普通はまずお目にかかることの無い、ダチョウの卵でオムレツを作ってみたらどうなるのでしょうか?たった1個のダチョウの卵ですが、硬い殻を割ってみるとボウルに入りきらないほどの量でした。ダチョウの卵はなんと、鶏卵の25個分ほどの大きさがあるのだそうです。
ローストビーフ丼
肉だけでなく、ご飯も一緒に美味しく食べることができるメニューとしてはローストビーフがオススメです。たんぱく質・炭水化物・脂質のすべてをバランス良く摂ることができるため、バルクアップの強い味方となるでしょう。
ローストビーフの定番のトッピングである卵を乗せることで、さらに栄養価が高まります。
海鮮丼
ローストビーフ丼と同様に、たんぱく質と同時に米の炭水化物を摂ることができるメニューです。具材にもよりますが、牛肉が使われるローストビーフと比べると脂質は少ない傾向にあります。カロリーを抑え気味にしながらもしっかりと食べたいときにも重宝します。
タコ・イカ・ホタテ・エビなどの脂質の少ない具材であればダイエットに、サバやサーモンなどの良質な脂質が摂れる具材ならバルクアップ向きです。
パスタ
パスタに使われるデュラム小麦には、炭水化物だけではなくある程度のたんぱく質も含まれています。小麦のグルテンにはグルタミンが豊富です。具材としてシーフードなどを足すことでたんぱく質の量を増やすことができます。
カルボナーラなどのようなクリームパスタだとお腹に溜まってしまい、胃もたれを起こしやすく、バルクアップにはあまり向きません。オイルパスタやスープパスタなどのあっさりしたものを選ぶと良いでしょう。
オリーブオイルの炒め物(アヒージョ)
オリーブオイルはさまざまな食材とマッチします。肉や魚と好みの具材を合わせて炒め物にすることで、たんぱく質と良質な脂質であるオレイン酸を効率良く摂取することができます。
アヒージョとは、具材をニンニクとオリーブオイルで煮込むスペイン料理です。ニンニクにはビタミンB1の吸収を助ける成分が含まれており、筋トレの回復にも役に立つことでしょう。
チーズとナッツ
チーズとナッツは、特にケトジェニック中の間食として便利です。不足しがちな脂質を補うために小腹が空いたときに取り入れると良いでしょう。もちろんバルクアップのためにたくさんのカロリーを稼ぎたいときにも有効です。
筋トレと食事のタイミング
筋トレの効果をより高めるためには、食事の内容だけではなくタイミングにも気をつけましょう。食事をするタイミングを間違えてしまうと、筋トレのパフォーマンスを下げてしまう可能性があるため注意が必要です。
筋トレ前の食事
筋トレをするときに重要なのは、筋トレの刺激による筋肉の分解を防ぎ、筋肉の合成を高めた状態にしておくことです。そのためには空腹状態で筋トレをおこなうのは避けましょう。
かといって、食事の直後に筋トレをするのも避けてください。食べた直後はまだ栄養の吸収が途中の状態で、身体を動かすエネルギーが十分にあるとは言えません。
食後をしてから2〜3時間経つと食べたものが吸収され、血糖値が安定して血液中のアミノ酸濃度が高い状態になります。その状態で筋トレをおこなうのがベストです。
直前のエネルギー補給の落とし穴
忙しくて食事ができないまま、筋トレをおこなわざるを得ない日もあることでしょう。そのようなときに陥りやすい間違いが、筋トレ直前に砂糖入り飲料や砂糖菓子のような甘いものを食べることでエネルギーを補おうとしてしまうことです。
砂糖が多く含まれる甘いものを摂ると、血糖値が素早く上がります。しかし、短期間で上がった血糖値は急激に下がって元に戻ってしまいます。筋トレと血糖値の下がるタイミングが被ってしまうと低血糖のような状態になり、逆に力が出なくなってしまいます。
十分な食事を摂れないまま筋トレをする場合は、運動中の炭水化物として優秀なサプリメントであるマルトデキストリンを活用すると良いでしょう。
筋トレ後の食事
甘いものを食べるのであれば、筋トレ後がオススメです。筋トレの負荷によってストレスを受けた筋肉には、できるだけ速く栄養を届ける必要があります。そのときに甘いものを食べて血糖値を上げることでインスリンが分泌され、血液中のアミノ酸が筋肉に運ばれて筋肉の合成が起こります。
筋トレ後は甘いジュースにプロテインを割って飲んだり、あるいはプロテインと一緒に和菓子を食べるのも良いでしょう。
筋トレ後のプロテインを飲んで、それから1時間後を目安に次の食事をすることで筋肉の合成を活発にした状態を長く持続させることができます。
まとめ
筋トレをおこなうこと、そして同時に食事を充実させることで筋トレの効果は現われます。
三大栄養素であるたんぱく質・炭水化物・脂質はどれも筋肉にとって大切です。それぞれの栄養素の役割を知った上で、必要な量を摂取しましょう。
また、筋トレのパフォーマンスを上げるためには、食事のタイミングも大切です。
筋トレ前の食事でエネルギーを補い、筋トレ後の食事で筋肉を回復させるための栄養を補給しましょう。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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