ケトジェニックダイエットは、糖質を制限するのではなく、限りなく0に近づけるダイエット法です。この方法で効率良く痩せるには、ケトジェニックの仕組みや特徴を知ったうえで、効果の高い方法を実践する必要があります。
今回は、ケトジェニックダイエットのメリット・デメリットやケトジェニックダイエットで痩せやすい人の特徴、具体的な実践方法を解説します。
記事の後半では、ケトジェニックダイエット中にオススメの食材やサプリメントも紹介します。ケトジェニックダイエットを実施する前にぜひ読んでみてください。
ケトジェニックダイエットとは?
ケトジェニックダイエットは、糖質制限ダイエットの一種です。
通常、人間の身体は炭水化物(糖質)と脂肪(脂質)をエネルギーにしています。しかし、食事で糖質の摂取量を制限すると、エネルギーを補うために脂質を分解して合成されたケトン体(※)を主要なエネルギー源として使うようになります。
※ケトン体とはベータヒドロキシ酪酸・アセト酢酸・アセトンの総称で、いずれも脂肪酸・アミノ酸の代謝物として肝臓で合成されます。
ケトン体を主要のエネルギー源としている状態をケトーシスといいます。
ケトーシスになっておもなエネルギー源が炭水化物(糖質)から脂肪(脂質)に切替えて脂肪燃焼(ダイエット)させるのが、ケトジェニックダイエットの目的です。
ケトン体自体はケトジェニックダイエット中でなくても骨格筋・心筋などのエネルギー源として利用されています。ケトーシスになると、脳でもブドウ糖からケトン体へとエネルギー源が切替ります。
ケトーシスでは血液中のケトン体の濃度が高まります。ケトン体は酸性のため血液も本来の弱アルカリ性から酸性に変わり、この状態を「ケトアシドーシス」といいます。「ケトアシドーシス」は一部の病名にもなっていることから、なかにはこの状態を危険視する意見もあります。
しかし、ケトン体自体は危険な物質ではなく、ケトーシスも異常な状態ではありません。健康な人がケトジェニックダイエットをおこなうのは問題ありませんが、肝臓に疾患がある人がケトジェニックダイエットをおこなうと、病気が悪化してしまう可能性があります。
ケトジェニックダイエット理論を詳しく知りたい人は、以下の動画を参考に知識を深めてください。
ケトジェニックダイエットのメリット・デメリット
次に、ケトジェニックダイエットのメリットとデメリットを紹介します。
メリット
ケトジェニックダイエットには大きく分けて3つのメリットがあります。
減量時の筋肉の分解を最小限に抑えられる
ケトジェニックダイエットは、カロリーを抑えるカロリー制限とは違い、糖質以外の必須栄養素はしっかり摂取できるため、身体のエネルギーが不足しません。
カロリーを減らしてたんぱく質中心の食事を摂るダイエットでは多くの場合、筋肉量が減少してしまいます。しかし、ケトジェニックダイエットはカロリーではなく、糖質を制限しているため、筋肉の分解を最小限に抑えられます。
空腹感に悩まされない
ケトジェニックダイエットは糖質を極端に摂取しないため、食後の血糖値変動はかなり小さくなります。
つまり、血糖値の急激な低下が発生せず、空腹感を覚えることが少なくなります。糖質にさえ気をつけていれば、たくさんの量が食べられるのもメリットです。
とはいえ、度を越えて食べるとさすがに太ります。あくまで糖質を摂取せずに、満足が行く食事ができるくらいに思っておくのがオススメです。
ダイエット中でも空腹でイライラしないのは、ケトジェニックダイエットの大きな利点です。
外食をしやすい
脂肪を制限するカロリー制限食と比較すると、ケトジェニックダイエットは外食の選択肢が幅広い傾向にあります。
脂肪が含まれていない外食メニューを探すのは大変ですが、糖質の少ないメニューはたくさんあります。ステーキや焼肉はもちろん、定食でもライスを抜けば糖質制限になります。比較的我慢が少なくて済むダイエットです。
このように、ケトジェニックダイエットは比較的食事の自由度の高いダイエット法です。
特に外食をよくする人には実践しやすいダイエットです。
デメリット
ケトジェニックダイエットはメリットが大きい減量方法ですが、デメリットもあります。代表的なデメリットを2つ紹介します。
食費が高くなりがち
1つ目のデメリットは、食費が高くなることです。ケトジェニックダイエットの食事内容は炭水化物を抜かなければならないため、肉・魚・野菜・卵などが中心となります。比較的安価な米・パン・パスタなどに頼って食費を抑えられません。
さらには、プロテイン・BCAA・MCT(中鎖脂肪酸)オイルなどを摂取する場合は通常よりも食費がかかることを覚悟してください。
2~3日実行すれば痩せるものではなく、長期的に取組む必要があります。ケトジェニックダイエットをするならば、余裕を持った食事計画を立ててください。
ケトン臭が出る
2つ目のデメリットは、身体からケトン臭が出ることです。ケトン臭は果物が腐ったような体臭・口臭のことで、ケトン体の一つであるアセトンが臭いの原因物質です。血液中に増えたアセトンは、汗や呼気から身体の外に排出されます。
身体がケトン体をエネルギーとして上手に使えるようになると、臭いが収まるといわれています。なかにはケトン臭がまったく出ない人もいるため、個人差があります。
ケトン臭をやわらげるには、酸性のケトン体に対して、海藻・緑黄色野菜などのアルカリ性食材の摂取が有効とされます。
ケトジェニックダイエットで痩せやすい人とは?
ケトジェニックダイエットは、肥満(体脂肪率:男性25%、女性35%以上が目安)ではない人のほうが効果も出やすいため、筋肉量が多い人に特にオススメです。
ケトジェニックダイエットで痩せやすいかどうかをチェックするには、運動量にも注目してください。
運動量が少ない人の場合、ケトン体をあまり使いきれません。一方で、マラソンなどの持久力的運動をおこなっている人は、ケトジェニックダイエットで痩せやすいという研究結果も報告されています。
トレーニングによっては、ケトン体を使って持久力を増やして行くことも可能です。
ケトジェニックダイエットのやり方や注意点
ここからは、ケトジェニックダイエットで気をつけたいポイントと具体的な方法を解説していきます。
糖質の摂取を1日50g以下に抑える
ケトジェニックダイエットを実践する際、糖質の摂取を限りなく「0」にするのがポイントです。
糖質の摂取量は多くても1日50g以内にするのがオススメとなります。
ご飯・パン・パスタ・うどんなどの主食は完全にカットします。糖質の多い根菜・料理酒などの調味料も避けてください。
脂肪をたっぷり摂取する
糖質を限りなく「0」にする一方で、脂質はできる限り摂取します。脂肪の摂取量は、総摂取エネルギーの60%以上を目指してたっぷり食べてください。
脂肪の摂取量が少ないとただのカロリー制限食になり、エネルギー不足で筋肉が分解されます。動物性油脂には、動脈硬化を促進する飽和脂肪酸も多く含まれていることから、これまでは避けられがちでした。しかし、今は関係がないことがわかっています。そのため、ステーキなども安心して摂取できます。
脂質の摂取方法は以下の動画で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてください。
運動で筋肉量を維持する
ケトン体は、腕や脚などの四肢でエネルギーが使われやすい特徴があります。そのため、ケトジェニック食で痩せられるようになってきたら、筋肉量維持のためにもトレーニングで四肢を鍛えるのがオススメです。
ケトジェニックダイエット中にオススメのトレーニングを紹介します。
スクワット
スクワットは、人間の基本動作である「しゃがんで立つ」ことを通して、大腿を中心とした多くの筋肉を鍛えられるトレーニングです。スクワットをするときは、つま先を少し外側に向けて、腰を後ろに引くようにしゃがんでください。初心者の場合、15回前後を目安に挑戦するのがオススメです。
ベンチプレス
ベンチプレスは、大胸筋を鍛えるウエイトトレーニングの象徴的な種目です。基本的な動作は、トレーニング用ベンチに仰向けになり、バーベルを垂直に押し上げていきます。フォームが安定するまでは、スクワットと同様に15回ほど上げられる重量で挑戦するのがオススメです。
プルオーバー
プルオーバーは、背中や上腕三頭筋などを鍛えるトレーニングです。以下のように鍛える部位や使う器具によってさまざまなバリエーションがあります。
- ベントアームプルオーバー(バーベルを使い大胸筋や上腕三頭筋などを鍛えるもの)
- ストレートアームプルオーバー(バーベルを使い広背筋などを鍛えるもの)
- スタディングケーブルプルオーバー(ケーブルマシンを使い大胸筋と広背筋などを鍛えるもの) など
ストレスを溜め込まない
いくつかの研究では、ストレスが強くなったときに糖質の要求量が高まり、結果として甘いものの摂取の促進につながる対処行動が起こることがわかっています。ストレスが高まりすぎると、ドーパミンなどを活性化する人工甘味料や糖質にもいわゆる「やみつき」の状態になりやすいです。
ケトジェニックダイエット中に甘いものを欲しないためには、なるべくストレスを溜めずに過ごすことが大切となります。
ケトジェニックダイエットの実践期間は2か月まで
ケトジェニックダイエットは期間を決めておこなうのが理想です。長期間にわたって続けていると、体脂肪がなかなか落ちない停滞期に入っていきます。
実践期間は長くても2か月に設定するのがオススメです。身体にはホメオスタシスという恒常性を維持する機能があり、ずっと同じダイエットをしていると身体が慣れてしまい、ダイエット効果が薄れてきます。
ケトジェニックダイエットの停滞期から脱出する方法を詳しく知りたい人は、以下の動画を参考にしてください。
体重減少が止まったらローファット(低脂肪)ダイエットに切替え、ケトン体がエネルギー源の状態から糖質をエネルギー源にします。そうすると身体のホメオスタシスが変わり、今度は糖質をエネルギー源として再び脂肪燃焼しやすい状態になります。
ケトジェニックダイエットの期間中は、以下3つの時期に分かれます。
- 導入期
- 減量期
- 体重維持期
「導入期」は、糖質の摂取を控えることで、脂質メインのエネルギー体質であるケトーシスにするまでの段階です。身体がケトーシスに切替わると、導入期よりも少し糖質を増やして良い「減量期」に入っていきます。この時期になると、甘いものを食べたい気持ちも生じにくくなるのが一般的です。
「体重維持期」は、ケトジェニックダイエットによる減量を終える段階です。体重が戻らないように注意しながら食生活を戻していきます。
ケトジェニックダイエット中にオススメの食材
最後にケトジェニックダイエット中にオススメの食材を紹介します。
脂身の多い肉
鶏もも肉・鶏むね肉(皮つき)・サーロインステーキ・豚バラ肉などの脂身の多い肉を食べると、たんぱく質と脂質を摂れるのでオススメです。鶏肉ならば皮も食べます。ケトジェニックダイエットでは脂身を積極的に摂る必要があるため、脂身を取除いてしまわないように注意してください。
青魚
鯖・秋刀魚・鰯などの青魚もオススメです。脂身の多い魚を選ぶことで、ケトジェニックダイエットに必要な脂質を摂取できます。
チーズ
個包装の6Pチーズならばコンビニなどにも売っており、調理の手間もなく手軽に食べられます。乳製品のなかでは低糖質・高脂質・高たんぱくで、ケトジェニックダイエットに最適な食材です。
卵
1年中価格が安定していて入手しやすいのが卵です。黄身もしっかり食べると、脂質を摂れます。
ナッツ
良質な脂質とビタミン・ミネラル・食物繊維が含まれたナッツは、ケトジェニックダイエットに最適な食品です。おやつとして食べやすいのもポイントです。
MCTオイルなどの良質な油
ケトジェニックダイエットでは、バターやラードなどを摂取しても問題ありません。しかし、これらの油には、過剰な摂取でLDL(悪玉)コレステロールを増えやすくする特徴があります。ダイエットに取入れるなら、フィッシュオイル・オリーブオイル・MCTオイルなどの不飽和脂肪酸に分類される油を多く摂取するのが理想です。
なお、MCTオイルは、ケトーシスになるために便利な油です。1日30gのMCTオイルを摂取すると、ケトーシスになりやすいといわれています。
ケトジェニックダイエットを実践するなら、これらの食品をバランス良く摂ることが大切です。 ケトジェニックで注意すべきポイントや食べ物は、以下の動画でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
マヨネーズ
マヨネーズは通常、高カロリーで避けられがちですが、ケトジェニックダイエット中では脂質を補うのに便利です。料理の味つけの変化にも使えます。しかし、カロリーカットタイプのマヨネーズには、味調整のために糖質が入っていることが多いので注意してください。
ケトジェニックダイエット終了後の食事管理
ケトジェニックダイエットが終わったあとの体重維持期では、食生活の注意点がいくつかあります。
まず、ダイエット終了後は、糖質制限による耐糖性低下が生じている可能性があります。耐糖性低下とは、血液中の糖分濃度が高くなったとき、正常値まで戻す能力が低下することです。体重維持期の食事で主食などを摂る場合は、食品のGI値(糖質吸収スピード)や糖質の摂取量に気をつけてください。
ダイエットによって体重を落としたあとは、余計なカロリーを摂ってリバウンドしないことにも気をつける必要があります。カロリーオーバーを防ぐには、おかずの脂質を抑える方法がオススメです。血糖値の急激な上昇を抑えるために、食物繊維の多いオートミール・玄米などを摂取してください。
ちなみに、食物繊維が豊富な野菜などを先に摂取してから主食を食べると、結果として低GI値になります。これをベジタブルファーストといいます。
ケトジェニックダイエットの効率アップにオススメのサプリメント
ケトジェニックダイエット中は、上手にエネルギー変換されず、トレーニングのパフォーマンスが落ちることがあります。
ケトジェニック中でも筋トレ効果を高める方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
ケトジェニックダイエット中にトレーニング効果を高めたい場合、以下のサプリメントを取入れるのがオススメです。
BCAA
たんぱく質も、ケトジェニックダイエット中に摂取すべき重要な栄養素です。しかし、たんぱく質を構成するアミノ酸の種類には気をつける必要があります。特に、ケトジェニックダイエットの初期は、プロテインではなくBCAA・EAAを摂取するのがベターです。
プロテインには、糖新生(※)が発生しやすい糖原性アミノ酸が多く含まれているため、糖新生が活発になってケトーシスになりにくい特徴があります。ケトジェニックダイエットでプロテインを摂取しすぎると、ケトーシスになるのに時間がかかりますが、ケトーシスになったあとはプロテインを摂取しても問題ありません。
※ 新糖生とは、糖からグルコースに合成するのではなく、アミノ酸などからグルコースを合成する体内の反応経路のこと
一方でBCAA・EAAは、リジン・ロイシンなどのケト原性アミノ酸が多く、糖新生を起こしにくいサプリメントです。効率良くケトーシスになりたい人には、BCAA・EAAを摂取してください。
EAA
ケトジェニックダイエットで摂取したいサプリメントとしてオススメなのが『VALX EAA9(イーエーエーナイン)』です。ボディビルやパワーリフティング界のレジェンドである山本義徳先生の完全監修のもと、アミノ酸を最も効率良く吸収するために、配合率・配合量にこだわって開発しています。BCAAの含有量も国内トップレベルです。
シトラス・コーラ・パイナップルの3つの風味が用意されています。冷たい水・オレンジジュース・炭酸などにも溶けやすいため、アミノ酸サプリメントの味が苦手な人にもオススメです。
MCTオイル
ケトジェニックダイエットに欠かせない良質な油を求めるなら、『VALX MCTオイルパウダー』がオススメです。ココナッツ成分100%のC8(カプリル酸)だけを使用し、ケトジェニックに不可欠な糖質ゼロを実現しました。C8は中鎖脂肪酸のなかでも特に吸収が速い成分です。
MCTオイルは、コーヒーなどにも溶けやすいパウダータイプです。温かいものと冷たいものに溶け、油浮きもありません。無味無臭のため、油の味に敏感な人でも使いやすい商品です。
初めて使うときには、付属のスプーンで山盛り1杯(約4.5g)から少しずつ量を増やすようにしてください。
まとめ
ケトジェニックダイエットとは糖質制限ダイエットの一種で、おもなエネルギー源を糖質から脂質に切替えるケトーシス状態を利用したダイエット法です。
ケトジェニックダイエットには、以下のメリットとデメリットがあります。
【メリット】
- 減量時の筋肉の分解を最小限に抑えられる
- 空腹感に悩まされない
- 外食をしやすい
【デメリット】
- 食費が高くなりがち
- ケトン臭が出る
ケトジェニックダイエットを成功させるためのポイントは、以下のとおりです。
- 糖質の摂取量を1日50g以下に抑える
- 脂肪をたっぷり摂取する
- 運動で筋肉量を維持する
- ストレスを溜め込まない
- 実践期間は2か月まで
ケトジェニックダイエットでは、たんぱく質の種類に気をつける必要があります。ダイエット中でも栄養管理をしっかりおこないたい人は、『VALX EAA9(イーエーエーナイン)』や『VALX MCTオイルパウダー』などのサプリメントを活用してください。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
【You Tube】
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