たんぱく質は、人間が生きるために必要である三大栄養素のうちの一つです。そして、三大栄養素の中でも唯一、身体を構成する材料となる栄養素でもあります。
筋トレを日常的に行う人、そして大きな筋肉を手に入れたい人にとっては、筋肉の材料であるたんぱく質が必要という考え方はもはや必然でしょう。
しかし、自分に必要なたんぱく質の量がどのくらいかを把握し、実際に必要な量を摂取できている人は少ないのではないでしょうか。もっとも効果のある摂取量について、山本義徳先生が解説します。
筋トレをする人のたんぱく質の推奨摂量
たんぱく質の必要量は、その人の体重や運動量に応じて大きく異なります。また、目的によっても適切な摂取量を考える必要があります。
最低でも体重×2gの摂取は必須
厚生労働省による日本人の食事摂取基準(2020 年版)では、良質な動物性たんぱく質から摂った場合のたんぱく質の必要量を、体重×0.66gとしています。しかしこの量は、一般的な成人が健康を維持するための最低量です。
日常的に運動をしていて筋肉をつけたい人の場合は、当然さらに多くの量が必要となります。最低でも体重×2gのたんぱく質を摂取すること山本先生は推奨しています。
体重×2.8gの摂取で筋肥大の効果は最大に
さらに効果的に筋肥大を狙いたいのであれば、より多くのたんぱく質を摂取しましょう。
たんぱく質による筋肥大の効果は体重×2.8gの摂取で最大になると言われています。
たんぱく質の摂取量に関しては、多くの論文が発表されています。
さまざまな研究の結果を比較したところ、たんぱく質の摂取量が「体重×2.2g」よりは「体重×2.8g」の方が筋合成の効果が高かったものの、「体重×2.8g」と「体重×3.4g」の間にはあまり差がないという結果を読み取ることができます。
筋肉を増やすという目的においての、たんぱく質摂取量は「体重×2.8g」を目安にすると良いでしょう。逆にいうと、筋肉量を増やすという目的においては「体重×2.8g」以上の摂取は無駄になってしまう可能性が高いということになります。
減量中はたんぱく質摂取量を増やす
摂取カロリーによっても、必要なたんぱく質摂取量は変わります。
バルクアップ中は摂取するカロリーと糖質の量が多いため、実はたんぱく質をそこまで大量に摂る必要はありません。糖質を摂取することで、インスリンによる筋肉を合成する作用が期待でき、さらにはたんぱく質から糖質を作り出す糖新生が起こらないためです。体重×2gのたんぱく質でも、トータルの摂取カロリーが多ければ、バルクアップの効果は期待できます。
逆に減量中の場合は、多めのたんぱく質が必要になります。摂取カロリーが少ないと筋肉が分解されやすいだけではなく、摂取したたんぱく質も筋肉ではなくエネルギーとして利用されてしまう割合が高くなってしまいます。減量中の場合は、最低でも体重×2.5gのたんぱく質の摂取を目指しましょう。
たんぱく質の量がなぜ大切なのか?
たんぱく質は、英語でプロテインと呼ばれますが、これは「プロティウス」が語源となっています。プロティウスとは、ギリシャ語で1番大切なものという意味です。つまりたんぱく質はとても重要な栄養素ということになります。
そして、たんぱく質はただ摂取するだけではなく、しっかりとある程度の量を摂取することで初めて効果が現れます。
身体の材料になる
たんぱく質は、胃の中でアミノ酸という最小単位にまで分解されてから、身体の中に吸収されます。吸収されたアミノ酸はまた組み合わさって、さまざまな種類のたんぱく質となり、身体を構成する材料になります。
人体にもっとも多く存在するたんぱく質はコラーゲンです。コラーゲンは細胞どうしをつなぎ止める接着剤のような役割をしており、軟骨・腱・骨などの主要な成分として使われているのもコラーゲンです。
髪や爪も、ケラチンと呼ばれるたんぱく質の一種です。シスチンをはじめとした18種類のアミノ酸が組み合わさってできています。
そして筋肉もたんぱく質からできていることは、多くの人が知っていることでしょう。
筋肉に収縮を起こす働きがあるとされる、筋繊維を構造するアクチン・ミオシンもたんぱく質です。
このように、身体を構成する材料となるになるたんぱく質のことを「構造タンパク質」と言います。
筋肉量が多い人、またはこれから増やしたい人にとって、材料であるたんぱく質の必要量が多くなることは想像にかたくないでしょう。
生命活動を司っている
そして、構造タンパク質になることだけがたんぱく質の役割ではありません。
たんぱく質は代謝や酸素の運搬などの機能的な役割も担っています。
身体の中である物質と物質を結びつけて化学反応を起こし、別の物質を作ることを代謝といいます。代謝を行う時には酵素が必要になり、その酵素もたんぱく質からできています。
他にも、酸素を運搬する血液中のヘモグロビンや、神経伝達物質やホルモンもたんぱく質からできています。
つまり、たんぱく質が無いと体内での化学反応が全く起こらなくなり、生命活動が維持できなくなってしまうのです。
たんぱく質は生命維持のためにも、とても大切なものです。そのため、身体は一度使ったアミノ酸をリサイクルして再びたんぱく質を作ることで、なんとか機能を維持することができます。しかし、いちど使われたアミノ酸は古くなって劣化している場合があり、完全なたんぱく質を作ることができずに怪我や体調不良につながることがあります。
だからこそ、良質なたんぱく質をしっかりと量も確保する必要があるのです。
健康にためには実はもっとたんぱく質が必要?
リサイクルされた古いアミノ酸から不完全なたんぱく質が作られると、例えば皮膚にシワができやすかったり、コラーゲンが弱いために怪我をしやすい関節が出来上がったりしてしまいます。
そのため、健康レベルを引き上げたい人の場合は、筋肉量を増やしたい人よりも多くのたんぱく質を摂り、古いアミノ酸を新鮮なアミノ酸に置き換える必要があるかもしれないと山本先生は考えています。
例えば、体重が70kgの人の場合、1日に250gのたんぱく質の合成が起きていると言われています。そして身体には、そのうちの80%にあたる200gものたんぱく質をリサイクルによってまかなうことができる機能があるのだそうです。
したがって、たんぱく質の合成を全て新鮮なアミノ酸で置き換えるとしたら、体重が70kgの人は最低でも250gのたんぱく質が必要である可能性があります。これは体重×3g以上の量であり、筋トレをする人の基準から考えてもかなりの量です。
たんぱく質による筋肉量の増加は、体重×2.8gの摂取で最大になると本記事では紹介しました。しかし将来的には、健康のためには筋肥大が期待できる量以上のたんぱく質が必要であると言われる時代がやってくるかもしれません。
たんぱく質をどう摂取していくか
たんぱく質は、それぞれの食事で一定量をしっかりと摂り、1日を通して血液中のアミノ酸の量を保つことが重要です。そのため、1度の食事でまとめてたんぱく質を摂るのではなく、毎食できるだけ同じくらいの量のたんぱく質を摂ることができる食事を選ぶと良いでしょう。
また、特にたんぱく質を摂っておきたい重要なタイミングはトレーニング前です。
トレーニングを始める時点で血液中のアミノ酸がすでに多い状態にしておくことで、筋肉が分解されるのを防ぐことができます。
そのためにはトレーニングの1時間ほど前にホエイプロテインを摂取すると良いでしょう。通常の食事よりもプロテインは吸収速度が速く、血中アミノ酸濃度を速く高めることができるという特徴があります。
まとめ
筋トレをする人のたんぱく質の必要摂取量は、
・最低でも体重×2gの摂取が必要
・体重×2.8gの摂取で筋肥大の効果は最大になる。
・減量中は体重×2.5g以上の摂取が望ましい
・健康レベルを上げるためは、将来的には筋肥大に必要な量よりも多く必要になる可能性がある
記事監修者 情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
静岡県出身の日本のボディビルダー、トレーニング指導者。
メジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家など幅広いクライアントを指導している。
2019年4月から投稿を始めたYouTubeチャンネル「VALX 山本義徳 筋トレ大学」を開設。
一般社団法人 パーソナルトレーナー協会 理事
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)(下)
【SNS】
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監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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