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必須アミノ酸「フェニルアラニン」に副作用はある?摂取量の目安とは?

フェニルアラニンは、人が体内で作り出せない必須アミノ酸の一つで、肉類・魚介類・乳製品などに豊富に含まれる成分です。体内に取り込まれると、快感・幸福感と関係が深いドーパミンや身体を活動的にするノルアドレナリンに変換され、やる気や集中力を高めるとされています。

安全性の高い成分として知られているフェニルアラニンですが、摂取に気をつけなければならないケースもあることを知っている人は少ないでしょう。

この記事では、フェニルアラニンの副作用について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

なお、フェニルアラニンの効果については、以下の記事で詳しく解説しています。

必須アミノ酸の一つ「フェニルアラニン」のうれしい効果とは?【山本義徳監修】人の身体のもとになっているたんぱく質は、20種類のアミノ酸から構成されています。アミノ酸のうち、体内で合成されない「必須アミノ酸」に属す...

必須アミノ酸であるフェニルアラニンに副作用はある?

フェニルアラニンは人が体内で合成できない必須アミノ酸の一つで、ドーパミンやノルアドレナリンのもととなる成分です。

やる気や集中力を高める働きを持ち、基本的に安全な成分であると考えられています。
しかし、フェニルアラニンを過剰摂取してしまうと、血圧・心拍数の上昇や気分の落ち込みなどの副作用が起こる場合もあるので注意が必要です。

ここでは、フェニルアラニンの副作用や、特に注意をしたほうが良い人について解説します。

過剰摂取による血圧・心拍数上昇

フェニルアラニンは、ドーパミン・ノルアドレナリンという神経伝達物質のもとになる成分です。

ドーパミンは快感や幸福感に関わる神経伝達物質で、意欲や記憶力などに影響を与えるとされています。ノルアドレナリンはのちにアドレナリンに変わるホルモンで、交感神経を刺激して血圧・心拍数を上げ、身体を活動状態に導くのがおもな働きです。

しかし、いずれも過剰に分泌されると身体に悪影響をおよぼしかねません。ドーパミンの過剰分泌は、依存状態が高まったり、過食になったりする場合があります。また、ノルアドレナリンが過剰分泌されると自律神経が緊張しすぎて、血圧・心拍数が高くなりすぎたり、攻撃的になったりすることがあるでしょう。

特に心臓に持病を持つ人や、ギャンブル・お酒などに依存傾向がある人などは、症状が悪化する可能性があります。フェニルアラニンを多く含むサプリメントを摂取する際は、担当医に相談しておくと良いでしょう。

トリプトファンの取り込み阻害によるセロトニンの減少

フェニルアラニンを過剰摂取すると、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」が減少する可能性があります。

セロトニンは幸福感や安心感、集中力を高めたり、目覚めを良くしたりするホルモンです。ドーパミンやノルアドレナリンの分泌が活発になりすぎないよう、体内のホルモンバランスを整える働きも持っています。

セロトニンのもととなるのは、フェニルアラニンと同じ必須アミノ酸である「トリプトファン」です。トリプトファンは、納豆や味噌といった大豆製品・乳製品などに多く含まれ、体内に取り込まれたあとは脳の「血液脳関門」という場所を通ってセロトニンに変わります。

この血液脳関門を一緒に使っているのが、フェニルアラニンです。フェニルアラニンとトリプトファンは脳内につながる門を共有しているため、フェニルアラニンを摂りすぎるとトリプトファンを取り込みづらくなり、セロトニンが減ってしまう可能性があります。

結果、気分の落ち込み・集中力の低下・寝起きの悪さなどの症状が起こるケースが考えられるでしょう。フェニルアラニンのサプリメントを摂取する際は、トリプトファンとのバランスを考え、偏りすぎないよう注意が必要です。

フェニルケトン尿症の人は特に注意が必要

フェニルケトン尿症とは、フェニルアラニンをチロシンという物質に変換できない遺伝性疾患です。チロシンは非必須アミノ酸の一つで、乳製品・大豆製品に多く含まれているほか、酵素の働きによってフェニルアラニンから生成されます。

チロシンは肌や髪の毛の色素メラニンにも変わるため、フェニルケトン尿症の人はチロシン不足からメラニンの欠乏が起こりやすいでしょう。これにより、皮膚や髪の毛の色素が薄くなることがあります。

また、フェニルアラニンが体内に溜まって行くことで、フェニルアラニンが尿として排出され、独特のにおいを放つのも症状の一つです。血中のフェニルアラニン濃度が高まり、頭がぼーっとしたり、やる気が出なくなったりすることもあります。

フェニルケトン尿症の人はフェニルアラニンをうまく変換できないので、たんぱく質の摂取を控えなければなりません。新生児の場合はフェニルアラニンを除去したミルクを活用するケースもあり、その後も低フェニルアラニン食事療法を生涯にわたって続ける必要があります。

通常の食生活であれば副作用の危険性は低い

フェニルアラニンは、健康な人であれは副作用の危険性が低い、安全な物質とされています。

MSD株式会社が公開している医療辞典『MSDマニュアルプロフェッショナル版』によると、成人に必要なフェニルアラニン量は体重1kgにつき14mgなので、50kgの成人なら700mgです。

しかし、日本人のフェニルアラニンの1日平均摂取量は、男性で3.51g、女性2.97gと、医療辞典で示されている必要量を大きく上回る報告があがっています。また、2017年の研究では、被験者が3gのフェニルアラニンを摂取しましたが、健康への有害な影響は見られませんでした。

健康な人であれば、フェニルアラニンの副作用を心配する必要はほぼないでしょう。ただし、フェニルケトン尿症や高血圧・糖尿病などの持病を持っている人は、担当医と相談のうえ摂取してください。

参考:体重1kg当たりの必須アミノ酸の必要量(mg)地域在住中高年者のアミノ酸摂取量─食品アミノ酸成分表の新規構築による推定─The effects of phenylalanine on exercise-induced fat oxidation: a preliminary, double-blind, placebo-controlled, crossover trial)

フェニルアラニンが含まれる食品

フェニルアラニンは、乳製品・豆類・卵などに多く含まれています。フェニルアラニンを多く含む食品は以下のとおりです。

食品 100gあたりのフェニルアラニン含有量(mg
数の子 3700
煮干し(とびうお) 3200
かつお削り節 3100
凍り豆腐(乾燥) 3000
パルメザンチーズ 2400
ビーフジャーキー 2200
豚ゼラチン 2000
車ふ 1700
釜焼きふ 1600
豚ひれ肉(焼き) 1600
鳥胸肉 (焼き) 1500
豚レバースモーク 1500
鶏ささみ(ソテー) 1400
牛もも肉(ゆで) 1300
鳥ささみ(焼き) 1300
抹茶 1300
牛ひれ肉(焼き) 1200
豚もも肉(ゆで) 1200
干しわらび 1100
豚ロース(焼き) 1100
とんかつ 1100
ドライソーセージ 1100
ピュアココア 810
落花生(生) 710
落花生(ゆで) 700
パン粉 700
生ふ 700
マカロニ・スパゲッティ (乾燥) 700
えだまめ(冷凍) 670
鶏卵(ゆで) 660
えだまめ(生 600
えだまめ (ゆで) 590
インスタントコーヒー 320

(引用:食品成分データベース|文部科学省

フェニルアラニンは人工甘味料アスパルテームの原料でもあり、カロリーゼロと表記された飲み物にも多く含まれていることがあります。

フェニルアラニンを含む食品については、以下の記事も参考にしてください。

必須アミノ酸「フェニルアラニン」が多く含まれる食品一覧と含有量【山本義徳監修】アミノ酸は身体を動かすうえで欠かせない栄養の一つです。アミノ酸には、体内で合成できる「非必須アミノ酸」と、体内で合成できない「必須アミノ...

まとめ

フェニルアラニンは体内に取り込まれるとドーパミン・ノルアドレナリンに変換され、やる気や集中力を高めてくれる必須アミノ酸です。フェニルケトン尿症や心疾患などの持病がある人以外は、フェニルアラニンの摂りすぎで副作用が現れる可能性は低いといわれています。

最近では、フェニルアラニンを含む必須アミノ酸をバランス良く摂取できるサプリメントも登場しているので、活用してみるのも良いでしょう。

『VALX EAA9(イーエーエーナイン)』は、必須アミノ酸9種類をすべて配合しているサプリメントです。シトラス風味・コーラ風味・パイナップル風味から選べるフレーバーは飲みやすいと評判で、起床時や作業中などにも手軽に摂取できます。

食事の工夫・サプリメントの取入れなどを実践し、上手に必須アミノ酸を摂取しましょう。


公式ライン

監修者情報

山本義徳

山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。

一般社団法人 パーソナルトレーナー協会 理事

【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下) 
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる

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