無酸素運動とは、エネルギーを産生する際に酸素を必要としない運動を指します。瞬間的な力を必要とするため苦手意識を持つ人もいますが、正しくおこなえば太りにくい身体が手に入るなど、メリットも大きい運動です。
この記事では、無酸素運動の具体的な運動内容や、メリット・デメリットを解説します。オススメの無酸素運動メニューもご紹介しますので、ダイエットや筋トレを考えている人はぜひ参考にしてください。
無酸素運動とは?

無酸素運動とは、瞬発的に力を発揮する運動のことを指します。人が運動などの活動をする際には、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー源が必要です。
ATPを生成する経路には、酸素を使うものと、酸素を使わないものの2つがあります。無酸素運動とは、後者の経路で生産されたエネルギーでおこなう運動のことで、細胞がエネルギーを作り出す際に酸素を必要としません。運動中に呼吸をしないという意味ではないため、注意が必要です。
具体的には、短距離走や筋力トレーニングなど、瞬発的に力を発揮する運動が無酸素運動に該当します。無酸素運動は、短時間でも息切れするような負荷の高さが特徴です。
一方の有酸素運動とは、エネルギー生成に酸素を必要とする運動のこと。ランニングや水泳などが有酸素運動に該当します。ただし、水泳は息継ぎができないと無酸素運動に近い運動となるため、競泳はほぼ無酸素運動です。
有酸素運動はおもに体脂肪が燃料となるため、ダイエットを目的とした運動に、無酸素運動は筋力の瞬発的なパワーを高めてくれるため、筋肉強化に適しています。
無酸素運動で筋肉を強化する際は、自分の限界までしっかりと取り組むことがコツ。余力を残さずに負荷をかけることで筋肉が刺激され、筋組織が回復しようとする力が高まります。
筋組織の修復には、プロテインやアミノ酸といった栄養素が必要です。特に運動後に吸収率が高まるため、無酸素運動後はプロテインやアミノ酸を摂取して、効率の良い筋肉づくりをしていきましょう。
無酸素運動のメリット
無酸素運動には、以下のようなメリットがあります。
筋肉をつけることで太りにくい身体づくりができる
無酸素運動では筋肉をつけることができます。筋肉量が増加すると、筋肉を維持するためにたくさんのエネルギーが必要になり、結果的に基礎代謝が向上します。
基礎代謝とは、何もしていなくても消費されていくエネルギーのことです。基礎代謝が上がれば何もしなくてもエネルギーが消費されやすくなるため、太りにくい身体になれます。
筋肉1kgあたりのエネルギー消費量は1日約13kcalといわれています。1日たったの13kcalと思うかもしれませんが、これは脂肪の約3倍の消費量にあたります。
また、筋トレは成長ホルモンなど脂肪分解作用があるホルモンを分泌させる効果もあります。1日約50kcal、1か月で約1500kcalの基礎代謝量アップが見込めるともいわれています。
ラーメン1杯が500kcalだとすれば、1か月でラーメン3杯分のカロリーが消費される計算です。筋肉1kgの基礎代謝量なので、筋肉全体で考えるとさらに消費量は大きいと考えられます。
瞬発的な運動が多いため、運動時間を簡単に確保できる
無酸素運動の特徴は、短い時間で完了するという点です。有酸素運動は脂肪燃焼に適していますが、脂肪燃焼効果を得るにはある程度まとまった時間が必要になります。
一方の無酸素運動で大切なのは、瞬間的に力を発揮することです。短時間で力を出し切る必要があります。そのため、むしろ有酸素運動のような長時間の運動の継続はできません。
1分あれば十分な運動も多く、忙しい人でも簡単に運動時間を確保できるのは大きなメリットでしょう。わざわざジムに行かなくても自宅でできる運動も多いため、すきま時間に簡単に取り組めます。
無酸素運動のデメリット

無酸素運動のデメリットは次の2点です。
激しい運動が多い
無酸素運動は瞬間的に力を発揮する必要があるため、有酸素運動に比べて1回1回の負荷は大きい傾向にあります。
例えば有酸素運動の場合、ゆっくりとした歩行であっても数十分継続すれば効果が得られます。しかし、無酸素運動の場合は短時間で全力でダッシュしたり、筋肉に負荷をかけたりするトレーニングとなります。休む時間をほとんど入れずにトレーニングを繰り返す場合もあります。
有酸素運動のようにゆっくり時間をかけない分、激しさや苦しさを感じやすく、苦手意識を持つ人も多くいます。
無酸素運動のみではダイエットに適さない
無酸素運動と有酸素運動では、使用するエネルギー源が異なります。有酸素運動では脂肪もエネルギー源となりますが、無酸素運動でのおもなエネルギー源はブドウ糖です。
有酸素運動はそれ自体が脂肪燃焼につながりますが、無酸素運動には直接的な脂肪燃焼効果があるわけではありません。
ただし、無酸素運動によって筋肉量や基礎代謝量が増加するため、長期的にみるとダイエット効果につながります。
無酸素運動後は脂肪燃焼を助ける成長ホルモンも分泌され、有酸素運動時に消費されるエネルギーも増えます。有酸素運動と無酸素運動を組合せれば、さらにダイエット効果を高めることが可能です。
オススメの無酸素運動3選
無酸素運動には具体的にどのような運動があるのでしょうか?ご自宅でも簡単にできる無酸素運動を3つご紹介します。
スクワット
無酸素運動のポイントは、なるべく身体のなかで大きな筋肉から鍛えていくということです。
同じトレーニング時間でも、大きな筋肉を鍛えたほうが筋肉量は増えやすくなります。
スクワットは、身体のなかでも特に大きな筋肉である太ももを効果的に鍛えられるトレーニングです。
スクワットにも肩幅に足を広げるノーマルスクワットや、大きく足を広げるワイドスクワットなど、複数の種類があります。腰を下ろす際に膝がつま先より前に出ると効果が減少してしまうため、背筋をまっすぐ伸ばし、ゆっくり腰を下ろすことを意識しておこないましょう。
膝を曲げすぎたり、勢いをつけたりすると膝を痛める原因になるため、注意してください。
プッシュアップ
プッシュアップは腕立て伏せです。プッシュアップで鍛えられる大胸筋も、身体のなかで大きい筋肉の一つです。男性の場合は胸板が厚くなる効果、女性の場合はバストアップ効果が期待できるでしょう。
大胸筋だけではなく上腕三頭筋も鍛えられるため、二の腕のたるみも解消可能です。
プッシュアップをおこなう際は、まず肩幅よりも少し広めに手を床に置き、おしりが上がらないように四つん這いになります。そこから足を伸ばしてつま先を床につけたら、頭から足首までがまっすぐになるようにしましょう。脇を締めながら身体を床ギリギリまで下ろしたら、床を押しながら身体を持ち上げます。
まっすぐな姿勢をキープするのがポイントです。
プランク
プランクとは、体幹やインナーマッスルを鍛えられるトレーニングのことです。体幹とは、腹直筋・腹斜筋・大胸筋・広背筋・僧帽筋など、胴体を支える筋肉を指します。
インナーマッスルは身体の深い場所にある腹横筋・横隔膜といった筋肉のことで、姿勢保持などに重要な役割を果たしています。
プランクをすれば姿勢が整いやすくなるほか、内蔵が落ちづらくなるためお腹周りの引き締めにも効果的でしょう。
プランクは両肘を床につけた状態でうつぶせになり、腰を浮かせて背中をまっすぐにします。正しいフォームがとれたらその姿勢をキープしましょう。腰が反らないよう、お腹をしっかり引っ込めるのがコツです。
まとめ
無酸素運動とはエネルギー産生に酸素を必要としない、筋トレや短距離走など、瞬間的に力を発揮する運動を指します。
1回の運動量が大きいため苦手意識を持つ人もいますが、短時間で終わるうえに筋肉もつけやすく、誰でも太りにくい身体に近づける運動です。
無酸素運動はなるべく大きい筋肉から鍛えていくのがオススメです。今回の記事でご紹介した3つのメニューや有酸素運動も活用しながら、理想の身体を目指しましょう。
監修者情報

山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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