腕の裏側「力こぶ」の反対側にある上腕三頭筋は、縮むことで肘を伸ばしたり、腕を引いたりできます。その名のとおり3つの筋肉で構成されており、肘の上から背中にかけて広くつながっています。
肩甲骨にも付着しているため、硬くなると肩の不調や猫背の原因になることも。上腕三頭筋が硬くなることで起こる症状を解消するには、ストレッチが効果的です。
この記事では、上腕三頭筋ストレッチの効果が出やすい人・ストレッチのやり方・注意点を紹介します。日常生活の隙間時間やトレーニング後などに、ぜひトライしてみてください。
上腕三頭筋ストレッチの効果が出やすい人
上腕三頭筋は、普通に生活しているだけではあまり使われない筋肉です。そのため、ストレッチをしてほぐさないと硬くなってしまうことがあります。
しっかりと上腕三頭筋のストレッチをおこなえば、肩こり・猫背の解消に加え、四十肩・五十肩・肘痛を防ぐことが可能です。
上記のようなストレッチによる効果が出やすい人の特徴として、3パターンを紹介します。
デスクワークをしている人
デスクワークをしている人は、上腕三頭筋のストレッチ効果を実感できます。同じ姿勢で座っていると、上腕三頭筋や肩甲骨付近の筋肉が硬くなったり、周りの筋肉と癒着しやすくなったりします。
デスクワークでは、パソコンに向かう時間が長くなることも少なくありません。キーボードの位置に腕が固定され、手・腕・肩の筋肉への負担が大きくなるため、ストレッチが重要です。
仕事の合間などに上腕三頭筋ストレッチを取入れると、固まった筋肉がほぐれて楽になり、効果を実感できるでしょう。
肩の重さやだるさが気になる人
肩の重さ・だるさが気になる人にも、上腕三頭筋のストレッチは効果的です。肩の重さ・だるさは、上腕三頭筋が硬くなることで引き起こる可能性があるからです。
上腕三頭筋のストレッチによって肩関節の可動域を上げることで、肩の重さ・だるさの解消が期待できます。
上半身の筋トレをしている人
上半身の筋トレをしている人も、トレーニングのなかに上腕三頭筋のストレッチを取入れることをオススメします。ストレッチも取入れることで消費カロリーをより高めたり、筋肉痛を緩和させたりできます。
腕周りを太くしたい人や引き締めたい人は、筋トレだけをおこなっていてもなかなか成果が出ません。さらに、上腕三頭筋が硬くなっている状態で筋トレをすると、ケガにもつながります。
上腕三頭筋に負荷をかけるときには、ストレッチを組合わせると良いでしょう。
上腕三頭筋をほぐすストレッチ方法4選
上腕三頭筋をほぐすストレッチは、正しいやり方でおこなうことが大切です。ここでは、4つのストレッチ方法と、手順・ポイントを紹介します。座りながらできるストレッチもあるため、日常生活に取入れてみてください。
基本のストレッチ1
1つ目は、座ってできる簡単ストレッチです。以下では、右腕をストレッチするときの手順を解説しています。片腕ずつ、左右同じようにおこないましょう。
1. 上半身を起こして胸をはり、右腕をまっすぐ上げます。腕は、耳にくっつくくらいの位置にするのが目安です。手のひらは左を向いています。
2. 手から肘の前腕が頭の後ろに位置するよう、肘を曲げます。可能な限り手が下に位置するように伸ばすと、より効果的です。手のひらは右を向いています。
3. 左手で肘を支えて補助します。少し左に傾けると、筋肉の伸びをより感じられるでしょう。
4. 痛みを感じないところでキープし、20~30秒カウントします。
ストレッチの際は、上腕三頭筋が伸びていることを意識しながらおこなうのが大切です。
基本のストレッチ2
2つ目はペアでおこなうストレッチで、座っていても立っていてもできる方法です。以下は、右腕をストレッチするときの手順となります。左腕も同じようにおこないましょう。
1. ストレッチをおこなう人の右横か右後ろに、パートナーが位置します。
2. ストレッチをおこなう人は、右腕を上げます。耳にくっつけるようなイメージで、大きな隙間ができないようにすることがポイントです。手のひらが左を向いているかを確認してください。
3. 肘を曲げて前腕を頭の後ろへ持っていき、手のひらが右を向くようにします。
4. パートナーは、左手でストレッチをおこなう人の手を下へ伸ばし、右手で肘を支えます。痛くないところまで肩関節を左に傾けると、より効果的です。
5. 上腕三頭筋の伸びを感じたら、20~30秒キープします。
1人よりもペアでおこなうほうが上腕三頭筋を伸ばせるため、試してみてください。
床でできるストレッチ1
つぎは、床でできるストレッチ法を解説します。硬い床の場合は、ヨガマットなどを敷いてからおこなうと良いでしょう。以下は、右腕をストレッチするときの手順です。
1. リラックスした状態で、正座の姿勢を取ります。
2. 両手を軽くクロスさせて伸ばし、手から肘までが床につくよう身体を前に倒します。
3. 右手で右肩を触るイメージで肘を内側に曲げ、深呼吸しながら10秒キープしましょう。
4. 左右2セットずつおこないます。
肘の裏から背中にかけての筋肉が伸びていることを感じられるよう、肘を床に押しつけるのがポイントです。
床でできるストレッチ2
2つ目の方法も、硬い床の場合はヨガマットなどを敷いておこなうことをオススメします。以下は、右腕をストレッチするときの手順です。右腕が終わったら、左腕も同じようにおこないましょう。
1. 床の上で四つん這いの状態を取ります。
2. 右肩を床に向かって下ろして、右手を左脇の下に通します。
3. 手のひらは上に向けて右肘を床につけ、身体の左側に向かって伸ばします。
4. 上腕三頭筋と肩関節に伸びを感じたら、30秒カウントします。
上記はほかのストレッチのなかでも、特に体重がかかる方法です。痛みを感じたら無理せず、慎重におこなってください。
上腕三頭筋をストレッチする際の注意点
ここまでで紹介した4つのストレッチには、共通して注意すべきことが2つあります。
1つ目は、肩の関節に痛みがある人は無理に伸ばさないことです。ストレッチは、痛みを感じながらおこなうものではありません。
特に「基本のストレッチ2」と「床でできるストレッチ2」は、肩関節が大きく動きます。慣れるまでは、慎重にストレッチすることが大切です。肩関節周囲炎などを起こしている人は、様子を見ながらおこなってください。
2つ目は、トレーニング直前にはゆっくり伸ばすストレッチをしないことです。今回紹介した方法はすべて、ゆっくりと可動域を広げる静的ストレッチです。静的ストレッチを筋トレ直前におこなうと、筋力を落としてしまうという報告があります。
トレーニング直前には、ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)・ リハビリなどで用いられるPNFストレッチがオススメです。筋トレとストレッチの関係性については、山本義徳先生が解説している以下の記事をご覧ください。
まとめ
上腕三頭筋は、肘・肩甲骨・背中にかけてつながっているため、硬くなると肩こり・猫背になることがあります。しっかりと上腕三頭筋をほぐすことで、肩こり・猫背の解消、四十肩・肘痛などを防ぐことにつながります。特に以下の条件に当てはまっている人は、この記事で紹介した4つのストレッチ方法の効果が出やすいでしょう。
- デスクワークをしている人
- 肩の重さ・だるさが気になる人
- 上半身の筋トレをしている人
上腕三頭筋のストレッチは時間がかからず、仕事の合間や筋トレのあとに気軽に取入れられる方法です。痛みを感じない範囲で、試してみてください。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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