ふくらはぎを構成する下腿三頭筋(かたいさんとうきん)は、ヒラメ筋と腓腹筋(ひふくきん)に分かれており、それぞれ役割が異なります。ふくらはぎの筋肉は、日常生活の動き・スポーツに役立つほか、健康面にも影響します。「第二の心臓」といわれるほど、重要な筋肉の一つです。
この記事ではトップアスリートを指導する人気トレーナー山本義徳先生が、ふくらはぎに効果的な筋トレメニューを解説します。下腿三頭筋を鍛えるメリット・ストレッチの役割も紹介するので、筋肉をより意識した効果の高いトレーニングができるはずです。
下腿三頭筋とは
効果的な筋トレメニューの前に、下腿三頭筋の概要・構造・役割などを簡単に紹介します。
下腿三頭筋とは、ひざから足首までの部分(下腿)の後ろ面にある「ふくらはぎ」に位置する筋肉です。足首の屈伸・立位姿勢をキープする際などに使われます。
下腿三頭筋は「腓腹筋」と「ヒラメ筋」の2種類の筋肉で構成されています。腓腹筋は、ひざ上からかかとの間に伸びている部分のことで、すね部分とかかとをつなぐのがヒラメ筋です。それぞれの役割を以下で説明します。
腓腹筋
腓腹筋は、ふくらはぎの盛り上がった部分を指し、左右2つの筋肉で構成されています。左右の筋肉のうち、内側を内側腓腹筋・外側を外側腓腹筋と呼び、跳ぶ・走る際に大切な筋肉です。運動中に起こりやすい「こむら返り」は、腓腹筋のけいれんが原因だといわれています。
ヒラメ筋
ヒラメ筋は、つま先の動きに力を発揮する、ヒラメのような形の筋肉です。身体のバランスを取ったり、歩くときに倒れないように支えたりする役割を持っています。足関節底屈に貢献する強い筋肉のため、長時間の立ち仕事・マラソンなどをおこなう人には特に重要な筋肉となります。
下腿三頭筋の筋トレで得られるメリット
下腿三頭筋を鍛えると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。メリットを理解したうえでおこなう筋トレは、より高い効果が期待できます。以下で解説する5つのメリットを、しっかり理解しておきましょう。
脚が引き締まる
下腿三頭筋を鍛えることで、引き締まった脚を手に入れられます。男性ならメリハリのあるボリュームアップした脚、女性なら引き締まった健康的な脚を目指せるでしょう。
瞬発力が向上する
下腿三頭筋は歩行・走行・跳躍に使われる筋肉で、鍛えると歩行効率・ジャンプ力・瞬発力の向上が期待できます。
走る・ジャンプなど、地面を蹴るときの力のポイントは、アキレス腱の筋力です。アキレス腱はふくらはぎの筋肉とつながっているため、下腿三頭筋の筋トレをおこなうと地面を蹴る強さが上がります。結果的に、瞬発力が向上するなどの運動能力アップにつながります。
ケガをしにくくなる
下腿三頭筋を鍛えて筋肉をやわらかくすることで、ケガをしにくくなるメリットもあります。特に、ふくらはぎの肉離れは一度起こすと、再発しやすいといわれています。身体が硬い・間違った方法での筋力強化の繰り返しなどが、肉離れのおもな原因です。
下腿三頭筋の筋トレで筋力アップを図り、硬くなった筋肉を柔軟にすることで肉離れを予防できます。日頃から下腿三頭筋を鍛えておくことは、こむら返りの予防にもつながります。
疲れがたまりにくくなる
下腿三頭筋が鍛えられると血流が促進され、疲れの原因となる物質がたまりにくくなります。血流の促進によって、疲れ以外に肩こり・だるさなどの改善が期待できるのもメリットです。下腿三頭筋の筋トレは運動をおこなう人だけではなく、ウォーキングなどで息が切れやすい人にもオススメです。
太りにくくなる
筋トレ全般に共通しますが、下腿三頭筋を鍛えて筋肉量が上がると、太りにくい身体を目指せます。筋肉がつくことで基礎代謝が上がり、消費カロリーが高くなっていくからです。下腿三頭筋は、全身の筋肉のなかでも特に鍛えやすい部分のため、太りにくい身体づくりがしやすいでしょう。
下腿三頭筋の筋トレで効果的なメニュー6選
下腿三頭筋への効果が期待できる、山本義徳先生オススメの筋トレメニューを6種紹介します。
スタンディングカーフレイズ
器具が不要のため、下腿三頭筋の筋トレ初心者はスタンディングカーフレイズから始めるのがオススメです。下腿三頭筋がある程度強くなってきたら、ダンベルを持つ・バーベルをかつぐなどで負荷を増やしましょう。
台を使ったほうがより高い効果が期待でき、階段でも代用可能です。かかとは脚を下ろしたときに乗っている台よりも下げてください。
1. 足裏を半分ぐらい出して台の上に乗る
2. 思いっきり台の上で背伸びをする
3. 伸びきったら1秒ほど止めてゆっくりもとに戻す
4. ふくらはぎに刺激が届くまで20~30回繰り返す
スタンディングワンレッグカーフレイズ
スタンディングカーフレイズを片脚でおこなうのが「スタンディングワンレッグカーフレイズ」です。片脚でおこなう分、負荷が高くなるため、両脚に慣れて余裕が出てきたらトライしてみましょう。
1. 壁などに手をつき身体を安定させる
2. 片脚を上げてもう一方の脚にかける
3. 地面についている脚のかかとを思いっきり上げて背伸びをする
4. かかとを上げきったら一瞬止めて、時間をかけて戻す
ドンキーカーフレイズ
ドンキーカーフレイズは、椅子に手をついた状態でつま先を上下し、下腿三頭筋を鍛えるメニューです。少し違った角度から刺激が加わり、腓腹筋を集中的に鍛えられます。椅子は、背中が床と平行になるほどの高さにすると効果的です。ドンキーカーフレイズをおこなう際は、上半身に体重がかかりすぎないようにしてください。
1. ひざを伸ばしたまま椅子に両手をつく
2. かかとを一気に持ち上げる
3. 1秒ほど止めてゆっくりもとに戻す
シーテッドカーフレイズ
シーテッドカーフレイズは、ヒラメ筋に特化したメニューです。「重り」を使用しますが、中身入りのペットボトル・ダンベルなどで問題ありません。座ったときに、ひざが90度程度になる椅子でおこなうのがポイントです。
1. 浅く椅子に腰かけて、太ももの前方に重りを乗せる
2. 限界までかかとを持ち上げ、ゆっくり下ろす
3. かかとが床につく前に再度かかとを持ち上げる
カーフレイズホールド
カーフレイズホールドは、電車に乗っているときでもできるほど簡単なメニューです。空いた時間で気軽にできることから、筋トレの時間が取れない人にオススメです。慣れてきたら時間を長くして、負荷を増やしましょう。
ただ、中途半端な上げ方ではかかとに負荷が十分にかからないため、限界だと感じるまで上げてください。
1. 脚を肩幅程度に開く
2. かかとを限界まで持ち上げて背伸びする
3. その状態で20秒キープする
踏み台昇降
台に上り下りする踏み台昇降は有酸素運動のため、脂肪を燃焼させたい人・ふくらはぎを引き締めたい人にぴったりです。猫背にならないように胸を張り、姿勢に注意しておこなってください。
高い台は負荷が強すぎる場合が多く、自分の体力に合わせた高さにすることが大切です。
1. 10~20cm程度の高さがある台を用意する
2. 片脚ずつ台の上に乗る
3. 台の上に両脚を乗せたら片脚ずつ下ろす
下腿三頭筋の筋トレ後は正しい方法でストレッチをしよう!
筋トレ後のストレッチは筋肉の緊張をほぐし、疲れを軽減してくれます。下腿三頭筋をストレッチする際の注意点を解説するので、参考にしてください。
下腿三頭筋のストレッチは、リラックスしておこないます。緊張していると力みやすくなるため、筋肉を意識せずに深呼吸しながらストレッチしましょう。
もう一つ、筋肉に炎症などがあるときはストレッチを控えてください。ストレッチには身体を温める効果があり、炎症時におこなうと体温上昇により症状が悪化する可能性があるからです。無理をするとケガにつながるおそれもあるため、身体の状態を見ながら取入れましょう。
下腿三頭筋のストレッチメニューに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
ふくらはぎを構成する下腿三頭筋を鍛えると、脚が引き締まって見た目が良くなるでしょう。さらに、瞬発力の向上・ケガの防止・疲れがたまりにくい・太りにくくなるなどの効果も期待できます。
下腿三頭筋の筋トレメニューのなかには、自宅でできるもの・移動中の電車内でもできるものがあります。筋トレに時間が取れない人でも気軽に実行可能なため、試してみてください。
筋トレ後はストレッチで筋肉の緊張をほぐし、疲れが残らないようにすることも大切です。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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