筋トレをおこなうと筋肉痛はつきものですが、そもそも、筋肉痛の解消・予防ができないか気になる人もいるでしょう。
この記事では筋肉痛のメカニズムをはじめ、筋肉痛につながりやすい上腕二頭筋のトレーニングと対処法について解説します。あわせて、筋肉痛以外の上腕二頭筋の痛みの原因・筋肉痛が治まらないとき手軽に試せる対処法もお伝えします。
解説者は、トップアスリートも指導する人気トレーナーの山本義徳先生です。
上腕二頭筋の痛みを解消・予防したい人は、ぜひお役立てください。
筋肉痛とは
筋肉痛はなぜ起きるのか、まずそのメカニズムを理解しておきましょう。
筋肉痛と運動の関係
一般的に「筋肉痛」とは、運動が終わったあとに、しばらく時間を置いて起こる筋肉の痛みを指します。普段はあまり使っていない筋肉を使いすぎたときや、慣れない運動をおこなったときなどに現れやすい痛みです。
筋肉痛の原因
筋肉痛が起きるメカニズムは、医学的には完全に解明されていません。「運動で傷ついた筋線維が修復されるときに発生する」説が有力です。
同じ筋肉を過剰に使ったり、普段使わない筋肉を急に使ったりすると、筋肉を構成する筋線維や、周囲の結合組織がダメージを受けます。
傷ついた筋線維が修復されるプロセスで炎症が起き、炎症で生まれた刺激物質が筋肉を包んでいる膜(筋膜)を刺激します。この刺激が原因で起こる痛みが「筋肉痛」であると考えられているのです。
以下の記事では、山本義徳先生監修のもと、筋肉の発達と筋肉痛との関係を解説しています。ぜひこちらもご一読ください。
筋肉痛になりやすい上腕二頭筋のトレーニング
筋肉痛になりやすいのは、筋肉を伸ばしながら力を発揮する「エキセントリック運動」と呼ばれる動きです。エキセントリックでおこなう上腕二頭筋のトレーニングの一例が「バイセップスカール」です。詳しく見てみましょう。
エキセントリック運動とは
運動するとき、筋肉を伸ばして力を発揮するのが「エキセントリック運動」です。エキセントリック運動を含め、筋肉の収縮運動は以下の3つに分けられます。
- エキセントリック(伸張性)運動
伸びながらパワーを発揮する
例:階段を下りる、重い荷物を下ろす - コンセントリック(短縮性)運動
縮みながらパワーを発揮する
例:階段を上がる、重い荷物を持ち上げる - アイソメトリック(等尺性)運動
伸縮なくパワーを発揮する
例:腕相撲など
上記のうち、筋肉痛になりやすいのがエキセントリック運動です。筋肉は縮めるときより伸ばすときのほうが筋線維の負担が大きく、ダメージを受けやすいためです。階段を下りる・重いものを下ろすなどのエキセントリック運動の際は、なるべくゆっくりした動きを意識してください。
バイセップスカール
上腕二頭筋を鍛えるエキセントリック運動のトレーニング例が「バイセップスカール」です。バイセップスカールはダンベルを使っておこないます。
1. 両手にダンベルを持ち、ひざを軽く曲げて立つ
2. ダンベルが胸の前にくるまでひじを曲げていく
3. ダンベルを太ももの前までゆっくり下ろす
4. 1~3を繰り返す
筋肉痛以外で上腕二頭筋が痛む原因は?
筋肉痛以外の原因で上腕二頭筋が痛む場合、どのような原因が考えられるのでしょうか?
乳酸がたまると上腕二頭筋に違和感が生じ、痛みにつながります。上腕二頭筋に乳酸がたまる原因として、「長時間の同じ姿勢」「筋肉量の少なさ」が考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
長時間同じ姿勢で作業している
パソコンやスマートフォンを使っているとき、多くの人は腕を曲げて同じ姿勢を続けます。
筋肉は身体に血液を行き渡らせる「ポンプ」のような役割を果たしていますが、同じ姿勢を長く続けていると血行が悪くなり、筋肉にストレスがたまります。結果、疲労物質の乳酸が作られやすくなり、腕が凝って痛みにつながるのです。
座っているだけで身体が凝るのは、長時間の同じ姿勢で血液が上手く循環できていないからかもしれません。ストレッチして血液の流れを良くしましょう。
次章の「上腕二頭筋の筋肉痛が治らないときの対処法」の項で、デスクまわりでもサッとできるストレッチを紹介しています。ぜひ参考にしてください。
上腕二頭筋の筋肉量が少ない
上腕二頭筋の筋肉量も痛みの原因になります。筋肉量が少ないと血液を上手く流せず、乳酸がたまり疲れやすくなってしまうからです。
筋肉にはポンプの役割だけでなく、身体を支える役割もあるため、筋肉量が少ないと2つの役割の負担が大きく、筋肉は凝りやすくなってしまいます。上腕二頭筋の量が少ない人は、簡単な筋トレから始めてみると良いでしょう。
上腕二頭筋の筋肉痛が治らないときの対処法
上腕二頭筋は、ひじを曲げる・物を持つなど、日常生活で頻繁に使う部位です。筋肉痛が起こると身体の動きに影響が出て、生活の質も下がってしまいます。筋肉痛が治らないときは、以下で紹介する対処法を試してみてください。
ストレッチをする
上腕二頭筋の凝りに起因する血行悪化が痛みにつながるため、ストレッチで筋肉をほぐして血流を良くしてあげましょう。腕が軽くなり、痛みも軽減します。
・ストレッチ1 腕をひねる
仕事の合間にオススメのストレッチです。
1. テーブルなどを背にして立つ
2. 指先を身体側にして、テーブルに両手をつく
3. そのままテーブルを押すように、ひじを真っすぐ伸ばす
4. 気持ち良く感じるところでキープ(手のひらが浮いてしまってもOK)
5. ゆっくりともとの姿勢に戻す
・ストレッチ2 座っておこなう
繰り返すと可動域が広がります。
1. 手のひら同士を胸の前で合わせる
2. 両腕を前に伸ばしていく
3. 腕が一直線になったらそのままキープ
4. 手首部分を胸につけるようにゆっくりと戻す
・ストレッチ3 壁を使う
呼吸と上腕二頭筋を意識しておこなってください。
1. 壁に向かって立つ
2. 肩の高さで壁に片手をつく
3. 手で壁を押す
4. 壁に体重をかけた状態で20秒間キープ
5. 反対側の腕に替えて同様におこなう
十分な睡眠をとる
痛みにつながる上腕二頭筋の凝りを解消するためには、睡眠も重要です。良質な睡眠のポイントは「寝るときの姿勢」「規則正しい生活リズム」です。
寝るときの姿勢が良くないと、ストレッチで筋肉をほぐしても効果に限界があります。たっぷり睡眠をとったはずなのに疲れが抜けない人は、寝ているときの姿勢や枕の高さなどを見直してみましょう。
理想の生活リズムは、「毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる」ことです。規則正しい生活は、血行にも良い影響を与えます。
ビタミンEを摂る
ビタミンEは血流を良くする効果が期待される栄養素です。ビタミンEはアーモンド・アボカド・オリーブオイル・うなぎなどに多く含まれますが、サプリメントを利用すれば、より手軽で確実に摂取できるでしょう
筋肉痛に効果が期待できるサプリメントに関しては、以下の記事で解説しています。2019年4月にYouTubeチャンネル『山本義徳 筋トレ大学』を開設し、今や登録者数55万人を超える、山本義徳先生の豊富な経験に基づいた内容です。
筋トレ後のアイシングは筋肉痛の予防になる
筋肉の炎症はアイシングで回復が促進され、筋肉痛予防にもつながります。
血行改善には温めたほうが良いと思いがちですが、まずアイシングで炎症を抑え、症状が落ち着いてから温めると、血流が良くなり回復が早まります。トレーニング後はアイシングして筋肉痛を予防しましょう。
アイシング専用のアイスバッグも市販されていますが、ビニール袋に氷を入れてタオルを巻いたもので代用できます。
まとめ
運動にともなって起こる筋肉痛は、慣れない運動をおこなったとき・普段あまり使っていない筋肉を使いすぎた際などに現れやすい痛みです。筋肉痛のメカニズムははっきり解明されていませんが、運動で傷ついた筋線維の修復プロセスで発生する説が有力です。
長時間の同じ姿勢や、少ない筋肉量も上腕二頭筋の痛みの要因です。
筋肉痛を予防するために、日頃からストレッチ・十分な睡眠・ビタミンE摂取などを心がけましょう。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
【You Tube】
山本義徳先生の知識と経験に基づいたトレーニング方法や、プロテインやサプリメントの情報を科学的根拠(エビデンス)に基づいて、YouTube動画を随時更新しています。
【筋トレ大学PRO】
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