僧帽筋中部をトレーニングすると、理想のボディラインをつくること以外にも、さまざまなメリットを得ることが可能です。しかし、これから筋トレをする初心者の場合、具体的にどのようなメニューで僧帽筋を鍛えたらいいかわからないこともあるでしょう。
この記事では、僧帽筋がどういう筋肉かを確認したうえで、僧帽筋中部における筋トレのやり方・効果の高いメニューを解説します。後半では、僧帽筋中部の筋トレの効果を高めるサプリメントも紹介します。
僧帽筋とは?部位別の役割
僧帽筋とは、首のうしろから肩、背中にかけて張っている筋肉の総称であり、肩甲骨を動かすうえで欠かせないものです。
僧帽筋は大きく広い筋肉であるため、上部・中部・下部のどこを鍛えたいかによって、実施すべきトレーニングも変わってきます。
ここでは、まず、僧帽筋上部・中部・下部の役割と特徴を紹介しましょう。
僧帽筋上部
僧帽筋の上部は、肩から首のうしろにかけて広がっている筋肉です。起始が後頭骨と項靭帯、停止が鎖骨の外側2分の1に当たります。
起始とは、骨に付着する筋肉の両端のうち運動時に固定される、もしくは動くことが少ない端です。停止とは、大きく動く端を指します。
僧帽筋上部のおもな役割は、以下の3つです。
- 肩甲骨の挙上
- 上方回旋
- 内転の補助
具体的な動きとしては、僧帽筋の上部が収縮し、起始と停止が近づくことで肩甲骨の上方回旋が可能になるイメージです。僧帽筋上部には、頸部の筋肉のなかでも、とても長いという特徴があります。
僧帽筋上部は、首を下に向けたり、鎖骨を引き上げたりするときにも使われる筋肉です。頭部突出の姿勢・嚥下障害とも関係があります。
僧帽筋中部
僧帽筋中部は、起始を第7頚椎と第1・2・3胸椎の棘突起、停止を肩峰と肩甲棘とする筋肉です。
僧帽筋中部のおもな役割として、肩甲骨の内転と安定性を保つことがあげられます。肩甲骨を安定させるには、僧帽筋中部で後方に引く力と、前鋸筋で前方へ引っ張る力との合力が大切だからです。これらの筋肉が肩甲骨を胸骨に押しつけることで、安定性が保たれる仕組みとなっています。
僧帽筋下部
僧帽筋下部は、起始を第4~12胸椎の棘突起、停止を肩甲棘内側3分の1とする筋肉です。おもな役割としては、以下の3つがあげられます。
- 肩甲骨の下制
- 上方回旋
- 内転の補助
僧帽筋の下部は、上部・中部と比べて注目されにくい筋肉です。しかし、僧帽筋下部が上手く動かないと、肩甲骨の動きが阻害されてしまいます。
そのため、下部もほかの2つと同様にトレーニングで鍛えることが大切でしょう。
僧帽筋を鍛えるメリット
僧帽筋の筋トレをおこなうと、以下の効果やメリットが期待できます。
たくましい後姿をつくれる
僧帽筋のトレーニングは、上半身や体幹を鍛えてたくましくキレイな身体をつくりたい人にオススメです。この部位の筋トレを続けると、僧帽筋が大きくなることで周囲に以下のような印象を与えやすくなります。
- 上半身が逆三角形のシルエットになる
- たくましい背中になる
- 肩幅が広くなる
- 肩まわりに厚みが出る
僧帽筋のトレーニングは、いわゆる背肉・なで肩の解消にもオススメです。
姿勢が正しくなる
長時間のデスクワークやスマートフォン使用は、姿勢を悪くする原因です。悪い姿勢を続けていると、背中の自然なカーブがなくなり、結果として実年齢よりも老けて見える猫背になってしまいます。
お年寄りなどが猫背になると、前のめりの姿勢となって転倒しやすくなるでしょう。猫背は、腰・肩、内臓などへの負担になるため、僧帽筋などを鍛えて正しい姿勢を維持することが大切です。
肩こりの予防ができる
肩こりも、姿勢の悪化と同様に、長時間のスマートフォン使用・デスクワークなどが原因で起こります。
同じ姿勢でずっと机に座り続けていると、動かさない肩のまわりに老廃物が溜まり、新鮮な血液が送られにくくなりがちです。
デスクワークなどの合間に僧帽筋を動かすトレーニングをおこなうと、肩まわりの血の巡りが良くなります。血行不良が改善すれば、肩こりも生じにくくなるでしょう。
僧帽筋中部の筋トレで効果的なトレーニングメニュー
肩甲骨の安定を保つには、僧帽筋中部を鍛えることが特に大切です。ここでは、僧帽筋中部の筋力アップに効果的な5つのトレーニングメニューを紹介しましょう。
ケーブルローロー
ローイングマシンを使っておこなうトレーニングです。僧帽筋の中部と下部のほかに、広背筋も鍛えられるメニューといえます。基本的な流れは、以下のとおりです。
1. マシンに胸を起こした状態で座り、プレートに両脚を置く
2. ローイングマシンのアタッチメントを長いものに変えたうえで、肩幅より広めに持つ
3. 肩甲骨を寄せるイメージを持ちつつ、ゆっくりと胸のほうに引く
4. もとの位置に戻す
5. 2~4を繰り返す
長いアタッチメントがない場合は、プーリーハンドル・手幅の狭いものでも代用可能です。このトレーニングのポイントは、肩甲骨を寄せきって背中の筋肉を最大収縮させることにあります。
シーテッドローイング
僧帽筋中部と下部に効果的なトレーニングです。基本的な動きは、ケーブルローローと同じです。ただし、初心者の場合、不適切なフォームでマシンを使うことにより、腰などを痛めることがあります。
シーテッドローイングで大切なのは、お尻のつけ根から頭までをなるべく一直線にすることです。そして、目線を下げることなく、マシンを真っ直ぐ見る姿勢のキープが重要になります。
マシンのバーを戻すときには、息を吸い込みながらゆっくりと戻すようにしてください。慣れてきたら回数を増やしすぎず、重量で調整するのがオススメです。
斜め懸垂(インバーテッドロー)
僧帽筋の中部・下部・広背筋に効果的なメニューといえます。基本的なやり方は、以下のとおりです。
1. 仰向けに寝転がる
2. 背筋を伸ばした姿勢になり、順手でバーを握る
3. 肩甲骨を寄せることを意識しながら、身体を引き上げて行く
4. 身体を引き上げたら肩甲骨を寄せきる
5. 4の状態でやや顎を上げて背中の筋肉を完全収縮させる
6. 筋肉に負荷をかけながらもとに戻す
7. 2~6を繰り返す
斜め懸垂のポイントは、肩甲骨を動かして背中の筋肉をしっかり寄せることです。このポイントをおろそかにすると、僧帽筋・広背筋ではなく、上腕二頭筋に効いてしまいます。
ダンベルデッドリフト
ベンチプレス・スクワットと並びBIG3と位置づけられるトレーニングです。似た名前であるバーベルデッドリフトとの違いは、ダンベルを使うことで広い可動域で僧帽筋中部・広背筋を鍛えられるところにあります。
正しいやり方は、以下のとおりです。
1. 肩幅ぐらいに脚を広げる
2. 肩を落とし、背中の筋肉を意識しながら胸を前に突き出す
3. 背中を丸めずに前傾姿勢をつくる
4. 3の姿勢でハムストリングスの緊張が感じられるかをチェックする
5. ハムストリングスの緊張を感じたまま、膝を曲げて行く
6. ダンベルを持つ
7. 全筋肉の収縮を感じるイメージを持ちながら、真っ直ぐ上に押し上げる
8. 最も高いところまで持ち上げたら、肩を上げずに大きく胸を張る
ベントオーバーロー
バーベルを使って僧帽筋の中部・下部を収縮させるトレーニングです。ここまで紹介した僧帽筋中部向けのメニューのなかでも、上級者向けの種目といえます。
そのため、ベントオーバーローは、僧帽筋にある程度の筋肉がついてから、以下の基本を守って実施するのがオススメです。
1. 脚を肩幅に開き、バーベルを床から持ち上げる
2. 膝を軽く曲げた状態で、背筋を伸ばしたままお辞儀をするイメージで上半身を前に倒す
3. 膝のお皿の下にバーをセットする
4. へそとみぞおちの間に向けてバーを引く
5. ゆっくりバーを降ろして、3の位置に戻す
ベントオーバーローで効率良く僧帽筋中部を鍛えるには、以下の注意点を意識しながら反動を使わずにバーベルを上げることが大切となります。
- 腰を丸めない
- 肩をすくませない
- 肘を開かない
僧帽筋中部の筋トレをおこなう際の注意点
筋肉は、トレーニングによって筋線維に受けたダメージの回復過程で成長します。そのため、僧帽筋を効率良く鍛えるには、トレーニングをお休みする日を設けることも大切です。
例えば、僧帽筋だけを鍛えたい場合は、先述のメニューを毎日1種目ずつ実施するのではなく、1日に2~3種目を実施したあと、トレーニングのお休みを入れるのが良いでしょう。
僧帽筋だけにこだわらず腕・脚・お腹といった全身の筋肉を鍛えたいこともあるかもしれません。この場合、僧帽筋トレーニングを今日3種目実施したら、明日は下半身の筋トレをおこない、背中の筋肉をお休みするといったスケジュールを組むのがオススメです。
僧帽筋を鍛えるには運動前のたんぱく質補給も大切!
僧帽筋中部のトレーニング効率をアップさせるには、運動前の栄養補給も大切です。そのなかでも特に大切なのが、たんぱく質に含まれるアミノ酸といえます。
トレーニング前にたんぱく質を摂取すべき理由は、運動を開始すると同時に筋肉が体内のアミノ酸をエネルギー源として使いはじめてしまうからです。
そのときに、体内のアミノ酸が不足していると、身体は自分の筋肉を分解してアミノ酸を取り出そうとします。
この問題を防いで効率良く筋肉を大きくするには、サプリメントなどを使ってトレーニング前に栄養素を摂取する必要があるでしょう。
まとめ
僧帽筋は、肩甲骨を動かすうえで欠かせない筋肉で、僧帽筋上部・中部・下部に分かれています。僧帽筋を鍛えると、たくましいシルエット・正しい姿勢・肩こり予防の効果が期待できるでしょう。
僧帽筋中部を鍛えるなら、以下のメニューを組合わせた筋トレをするのがオススメです。
- ベントオーバーロー
- ケーブルローロー
- シーテッドローイング
- 斜め懸垂
- ダンベルデッドリフト
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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