インクラインサイドレイズとは、肩幅を作る筋肉である三角筋を鍛えるサイドレイズのバリエーション種目です。角度をつけたベンチの上に横になり、片手づつのサイドレイズをおこないます。
また、インクラインサイドレイズは山本義徳先生が有効性を紹介した影響で、ジムで一躍流行した種目でもあります。インクラインサイドレイズのポイント、そして普通のサイドレイズよりも三角筋に効きやすい理由を山本義徳先生が解説します。
インクラインサイドレイズのやり方
1.45度くらいに設定したベンチに横になる
2.身体の側面からダンベルを持った腕を上にあげる
3.ゆっくりと戻していく
インクラインサイドレイズの注意点
・上げながら小指を上に捻ってしまうと、肩を怪我してしまう可能性があります。親指が上に来るように上げていきましょう。
・スタート時にダンベルを振り上げてしまうと、三角筋に負荷が入らなくなってしまいます。ダンベルは反動を使わずに上げていきましょう。
インクラインサイドレイズの重量
インクラインサイドレイズを効果的におこなうためには、あまり反動を使わずに上げましょう。重い重量を扱う日と軽い重量を扱う日をどちらも設けることが筋肉の発達のために必要ですが、重い重量の日であってもしっかりと自分でコントロールできる範囲の重さを扱いましょう。
インクラインサイドレイズで鍛えられる筋肉
一般的に「肩が凝った」というときには、解剖学的にいうと実は首の筋肉である僧帽筋のことを指しています。肩のトレーニングをおこなうときに鍛えたいのは、首の筋肉である僧帽筋ではなく、肩幅を広げるために有効な三角筋と呼ばれる筋肉です。
起始と停止
筋肉の両端をそれぞれ起始(きし)と停止(ていし)と呼びます。一般的には、筋肉が収縮するときに関節の動きが小さい方が起始、大きい方が停止とされています。ターゲットとなる筋肉がどこに付着しているか意識することで、より効果的なトレーニングを行うことができます。
三角筋
三角筋は、筋繊維に走る方向によって前部(フロント)・中部(サイド)・後部(リア)の3つに分類されます。インクラインサイドレイズおこなうと、主に三角筋の中部を鍛えることができ、横に張り出した肩の筋肉を作ることができます。
起始
前部
鎖骨の外側1/3
中部
肩峰(けんぽう
後部
肩甲棘(けんこうきょく)
停止
上腕骨の三角筋粗面(さんかくきんそめん)
作用
前部
肩関節の外転・屈曲・水平屈曲
中部
外展
後部
外展・伸展・水平伸展
サイドレイズよりもインクラインサイドレイズ?!
できるだけ僧帽筋には効かせずに、三角筋だけを大きくすることが見栄えの良い体型を作る上では大切です。
しかし、サイドレイズを行ってもなかなか三角筋に効いている実感がなく、僧帽筋ばかりに効いてしまうという悩みを持つ人も多いでしょう。僧帽筋ばかりが発達してしまうと、首回りが太くなってしまい、いわゆるなで肩体型に見えてしまうこともあります。
そこで積極的におこなっていきたいのが、インクラインサイドレイズです。
肩のトレーニングとしてベーシックな種目として知られるサイドレイズは、身体をまっすぐに直立させた状態で両腕を外に向かって上げていきます。
まず言うまでもなく、重力は上から下に向かってかかっています。フリーウエイトのトレーニングにおいては、ダンベルやバーベルを下から上に上げる動作をしなければ筋肉に負荷をかけることはできません。
したがって重力を考えると、サイドレイズのスタートポジションから上げ始めて間もない時点ではあまりダンベルの負荷が三角筋にかかっていないと言えます。
しかし解剖学的に考えると、重力の負荷がかからないサイドレイズの上げ始めこそ、三角筋にしっかりと負荷をかけたいポイントです。なぜならサイドレイズの動作を解剖学的に見ると、スタート位置から30度くらいまでが純粋に三角筋だけを使える領域であるからです。
人間の身体は、上腕骨と肩甲骨が共同で働いています。腕を上に上げていくと同時に肩甲骨も動く仕組みのことを「肩甲上腕リズム」と言います。
腕を身体の横に付けた状態から上へ上げていくと、30度くらいまでは肩甲骨は動かず、上腕骨のみが動作します。ここでは三角筋だけが働いています。
そして上腕が30度よりも上がると、上腕骨と連動し肩甲骨も一緒に動きます。この局面では、三角筋と同時に僧帽筋も働いてしまいます。
重力の関係で三角筋を純粋に使うことができるポジションでは負荷がかからず、やっと負荷がかかるところでは僧帽筋も一緒に使われてしまうのが、サイドレイズのデメリットです。
これらのサイドレイズのデメリットを解消したのがインクラインサイドレイズです。
インクラインサイドレイズでは、上半身を傾けることによって、スタートポジションから上げ始めて間もない、いちばん三角筋が使える領域でダンベルの負荷をしっかりとかけることができます。
サイドレイズをやってもなかなか三角筋に効かないと感じる人は、インクラインサイドレイズをぜひ取り入れてみてください。
参考動画:肩を大きくするためにインクラインサイドレイズが効果的な理由とは?
まとめ
サイドレイズのデメリットを解消し、より三角筋に効かせやすく改良されたのがインクラインサイドレイズです。ボディビル現役時代の山本先生が実際に取り入れていた種目でもあるので、大きな肩を作りたい人にとって、有効な種目であると言えます。
小指からあげることで肩が内旋したフォームになったり、ダンベルを振り上げたりしないように注意し、正しく効果的におこないましょう。
サイドレイズをずっとおこなってきて新しい刺激が欲しい人、そしてなかなかサイドレイズがうまく効かせられない人はぜひお試しください。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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