クレアチンは、運動の効果を高めると言うエビデンスが数多く報告されている栄養素の一つです。しかし一方で「効果がない」と言う声も少なからずあるため、摂取を躊躇している方もいらっしゃるでしょう。
今回は、クレアチンの摂取で期待できる効果と、クレアチンの摂取が必要な方、そしてクレアチンに対するよくある質問と誤解について解説します。
クレアチンの効果とは
クレアチンには、エネルギー供給をサポートする働きがあります。
身体を動かすときのエネルギー源として利用されるのは、ATP(アデノシン3リン酸)と呼ばれる物質です。ATPからリン酸が一つはずれてADP(アデノシン2リン酸)になると、エネルギーが放出されて筋肉が収縮します。
しかし、体内に貯蓄されているATPの量はごくわずかなため、激しい運動をするとすぐに消費されてしまいます。したがって、運動を続けるためには、ATPの再合成が必要です。
クレアチンは、このATPの再合成に関わる物質です。
体内に取り込まれたクレアチンは、ほとんどがリン酸と結合したクレアチンリン酸として筋肉内に存在します。ATPが消費されADPになると、クレアチンリン酸はリン酸を速やかにADPに供給し、ATPを再生させます。
クレアチンは、体内で合成される物質であり、食事からも摂取可能な栄養素です。しかし、短時間に高い負荷がかかる運動をする方はクレアチンの消費量が多いため、サプリメントの利用がオススメです。
なお、クレアチンが筋肉トレーニングやスポーツ選手などにもたらす効果に関しては、以下のサイトでさらに詳しく解説しています。
参考:クレアチンリン酸 / CrP | e-ヘルスネット(厚生労働省)
クレアチンは効果なし?クレアチンの摂取が必要な人とは
運動時のエネルギー供給経路はいくつか種類がありますが、クレアチンが関与する経路は、瞬間的に爆発的なパワーが必要とされる無酸素運動時に使用されます。
そのため、クレアチンの積極的な摂取が必要なのは、筋力トレーニングやウエイトリフティング・短距離走などの無酸素運動をメインにおこなう方です。
さらに、クレアチンには、筋肉の合成を高めたり、筋肉の分解をおさえたりする作用も認められています。したがって、筋力トレーニングによりバルクアップを目指す方にもオススメの栄養素です。
一方、マラソンなどの有酸素運動がメインの場合は、クレアチンの摂取による運動能力の向上などの効果はあまり期待できません。有酸素運動時に主に使用されるエネルギー供給経路は、クレアチンを必要としないものだからです。
このように、クレアチンの効果のあらわれ方は、運動の内容や目的により変わってきます。クレアチンを摂取する際には、ただやみくもに摂取するのではなく、本当に必要かどうかを判断するようにしましょう。
クレアチンの効果に対する誤解
クレアチンは、無酸素運動時のエネルギー供給をスムーズにし、トレーニングの質の向上に役立つ栄養素ですが、飲むだけで何らかの効果があらわれるものではありません。
「クレアチンを飲むと筋力(瞬発力)が高まる」はウソ!
クレアチンだけを飲んでも、直接的に筋力を上げる効果はありません。瞬発力も高まりません。
クレアチンを摂取すると、質の高い無酸素運動を繰り返しできるようになるため、結果として筋力がアップする可能性はあります。
そして、ピーク時のパワーが持続しやすくなるため、短距離走などではタイムが短縮される場合もあります。
しかし、これらの効果はクレアチンによりパフォーマンスの質が高まった結果であり、筋力があがることを示すわけではありません。
クレアチンを摂取しても、必要なトレーニングをしなければ何も得られません。ご注意ください。
参考:クレアチンの効果や正しい飲み方とは|江崎グリコ株式会社
「クレアチンを飲むと筋肉がつく・太る」はウソ!
クレアチンを飲むだけでは、筋肉はつきません。体脂肪が増えて太る事もありません。
クレアチンには、筋肉内の水分量を増やす効果があります。そのため、筋肉内に引き込まれた水分の量だけ、体重が増える場合があります。さらに、除脂肪体重が増える場合もあります。
しかし、除脂肪体重が増えるのは、筋肉量が増えたからではなく、筋肉内に水分が増えて筋肉の重量が増しているからです。そして、体重増加の原因は水分量の増加であって、体脂肪の増加ではありません。
筋肉量を増やすためには、トレーニングが必要です。クレアチンを摂取して筋肉トレーニングをおこなえばバルクアップ効果を得やすくなるので、しっかりトレーニングしましょう。
参考:クレアチンの副作用は? | Creapure
参考:クレアチンが筋トレやアスリートにもたらす効果とは – VALX(バルクス)produced by 山本義徳
参考:クレアチンには副作用があるの?クレアチンの効果や飲み方についても解説! – VALX(バルクス)produced by 山本義徳
まとめ
クレアチンは、トレーニングの効果を引き上げる燃料のような役割を果たす栄養素です。クレアチンの効果は無酸素運動時にもっとも発揮されますが、摂取するだけで瞬発力や筋力が高まったり、筋肉量が増えたりする事はありません。
バルクアップを目指す場合は、クレアチンなどのサプリメントを上手に利用し、適切なトレーニングをおこなうようにしましょう。
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監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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