肩甲骨にある肩峰(けんぽう=肩甲骨の出っ張った骨)から上腕骨まで伸びる肩をおおう筋肉が三角筋です。
三角筋は上半身を代表する大きな筋肉で、筋肉量が多いため鍛えると基礎代謝が上がり太りにくい体質になります。
三角筋は前部・中部(側部)・後部に分けられ、前部は腕を前に持ち上げたり物を持ち上げたりする動き、中部は腕を上げたり外側に開いたりする動きに関わります。後部は腕を外側にまわしたりうしろに引いたりする動きを担う部位です。
この記事は三角筋に注目し、筋トレをしても筋肥大しない場合の原因をはじめ、効果的に鍛えるポイント・具体的なメニューを紹介します。三角筋肥大が進まずお悩みの人は、ぜひ参考にしてください。
三角筋が筋肥大しない原因
三角筋を鍛える筋トレをしているのに期待どおり三角筋が筋肥大しない場合、以下の3つの原因が考えられます。心当たりがないかトレーニングをチェックしましょう。
正しいフォームでトレーニングできていない
フォームが正しくないと負荷がしっかり三角筋にかからず、意図していない別の部位にかかってしまいます。せっかくの三角筋肥大目的の筋トレが「効いていない」状態です。間違ったフォームは痛みを引き起こす場合もあるでしょう。
肩関節は動きが複雑で関与する筋肉数も多く、正しいフォームで筋トレをおこなわないと負荷が逃げやすい部位なので、十分注意しなければなりません。
正しいフォームは負荷増量以上に大切な筋トレの基本です。最初は軽い負荷でもかまわないので、正しいフォームを優先したトレーニングをおこなってください。鏡でフォームを確認したり、第三者にフォームをチェックしたりしてもらいましょう。
負荷が足りていない
肩の筋トレは胸や脚の筋トレと違い、使用する筋肉が限られており、多くの筋肉を使いません。使う筋肉量が少ないため、負荷が重すぎると筋肉に過度な負担がかかるおそれがあります。
最初は軽い負荷で、狙った部位を意識した筋トレが効果的です。ただし、筋肉は刺激に慣れる傾向があり、少ない負荷のままでは期待した効果が徐々に得られにくくなります。負荷に慣れてきたら少しずつ負荷を増やし、刺激を増やして筋肉が慣れないようにしていきましょう。
三角筋全体を鍛えられていない
三角筋は構成する部位ごとに性質が異なり、対象を定めずに鍛えても効果が得られにくい場合があります。三角筋全体を効率的に鍛えるためには、部分ごとに分けてトレーニングをおこなうのが良いでしょう。
前部(フロント)・中部(サイド=側部)・後部(リア)をバランス良く鍛えることが筋肉の発達した丸い肩を目指すうえで非常に重要です。三角筋の筋繊維の走行方向に合わせたさまざまなメニューを使い分け、三角筋全体を鍛えましょう。
三角筋は3つの部位に分けて鍛えよう
三角筋に大きなイメージはあまりないようですが、体積で考えると上半身の筋肉のなかでも大きい筋肉といわれています。
三角筋は筋繊維の走行方向によって前部(フロント)・側部(サイド)・後部(リア)に分類されます。各部位の起始部位置は近いのですが、単一の筋トレメニューですべての部位を刺激することはできません。それぞれの部位の働きに応じたメニューを実行することで三角筋全体が刺激できます。
肩全体で目指すシルエットを意識し、各部位それぞれに効く筋トレニューをバランス良くおこないましょう。トレーニングに偏りがあると三角筋全体のバランスは保てなくなります。
三角筋を構成する3つの部位と、それぞれの走行方向や肩関節の外旋・内旋による筋肉の収縮・伸展を把握しましょう。肩関節の働きを理解した筋トレが筋肥大につながります。
三角筋前部の働き
三角筋前部は肩関節を前方へ上げて腕を内側へ内転させる部位で、以下のように働きます。
- 上腕を前方に上げる
- 上腕を前の方向へ水平に動かす
三角筋側部(中部)の働き
三角筋側部は腕を真横に上げる動きに関与する部位で、高重量トレーニングに反応しやすい筋肉です。
三角筋後部の働き
腕をうしろへ引く動きを助ける部位で、日常生活ではあまり使われません。
- 上腕を後方にまわす
- 上腕を水平に外方向へ動かす
次章では、前部・中部・後部それぞれの部位ごとのトレーニングメニューを紹介します。メニュー内容を参考に、どこに効かせているかを意識してトレーニングしてください。
三角筋の筋肥大|前部を鍛えるトレーニングメニュー
上腕を前方に上げたり前方向へ水平に動かしたりする、三角筋の前部を鍛えるためのトレーニングメニューを紹介します。
フロントレイズ
フロントレイズはダンベルを使って腕を前に上げ、三角筋前部を鍛えるメニューです。
1. 脚は肩幅程度に開いて直立
2. 手のひらは身体側に向け、太ももの前でダンベルを両手で持つ
3. 腕を伸ばしたままでダンベルを前に持ち上げて行く
4. 腕と床が水平になる位置まで上げたら、時間をかけてもとの位置に下ろす
5. 10回×3セットが目安
アーノルドプレス
ボディビルダー出身の有名俳優の名前を冠したアーノルドプレスは、ダンベルを持った上腕を前方へ移動して、三角筋前部に負荷を集中させるメニューです。
1. 手の甲が前方を向くようにして、肩の前面部あたりでダンベルを持つ
2. 手を持ち上げながら手首を内旋させて行く
3. 同時にひじを外側に開いて行く
4. 手を持ち上げきるタイミングで手のひらが前方に向くようにする
5. 手首を外旋させながらダンベルを下ろし、もとの位置に戻す
6. 8~12回×3セットが目安
三角筋の筋肥大|中部を鍛えるトレーニングメニュー
三角筋中部(=側部)を鍛えるトレーニングメニューを紹介します。
サイドレイズ
サイドレイズはダンベルをサイドに持ち上げるメニューです。三角筋中部にピンポイントで負荷を加えられます。
1. 両手にダンベルを持ち、脚は肩幅に開き直立
2. ひじを軽く曲げ、太ももの横でダンベルをかまえる
3. ダンベルを真横に上げて行く
4. 肩の高さまでダンベルを上げたら、時間をかけてもとの位置に戻す
5. 10回×3セットが目安
ダンベルアップライトロウ
ダンベルアップライトロウは、三角筋はもちろん、三角筋に隣接する肩甲骨付近の僧帽筋にも刺激が与えられるメニューです。肩周辺の血行を改善し、肩こり解消効果も期待できます。
1. 両手にダンベルを持ち、直立姿勢を取る
2. 肩幅程度に脚を開き、背筋を伸ばす
3. 胸を張り、太ももの横あたりにダンベルが来るようにかまえる
4. その体勢を維持してダンベルを胸の前まで引き上げる
5. 10回×3セットが目安
三角筋の筋肥大|後部を鍛えるトレーニングメニュー
三角筋後部を鍛えるトレーニングメニューを紹介します。三角筋の後部は普段の生活では意識するシーンが少なく、鍛えられる機会が限られている部位です。トレーニングで集中して鍛えましょう。
リアレイズ
リアレイズは、腕をうしろに上げて三角筋後部を鍛えるメニューです。日常生活では腕をうしろに持ち上げる動きはあまりないため、最初のうちは疲れ・筋肉痛を感じるかもしれません。
1. 両手にダンベルを持ち、ベンチや椅子に座る
2. 脚は肩幅程度に開く
3. 胸と太ももが密着するくらいまで腰を曲げて、上体を前に傾ける
4. 背筋は曲がらないよう、腰から頭までまっすぐになるようにする
5. 腕を後方に引き上げて行く
6. 限界と感じるまで上げたらもとの位置に戻す
7. 10回×3セットが目安
ベントオーバーリアレイズ
ベントオーバーリアレイズは、身体を前に傾けた状態で、うしろに向かってダンベルを持ち上げて行くメニューです。
1. 両手でダンベルを持ち、肩幅より狭めに脚を開く
2. ひざは軽く曲げてヒップを突き出し、床と水平になるまで上半身を倒す
3. 自然な位置で腕を下ろす
4. その体勢から後方にダンベルを引き上げて行く
5. 限界を感じるまで上げたら、もとの位置まで時間をかけて下ろす
6. 10回×3セットが目安
三角筋が筋肥大しないときに見直すこと
三角筋を鍛えても期待した効果が得られず、三角筋が十分肥大しないときがあります。そのようなときは、なんらかの原因があるはずです。以下の観点でトレーニングを見直し、効果が出るように軌道修正しましょう。
高重量種目を先におこなっていないか
トレーニングは、まず軽めの負荷で慎重におこなうのが基本です。三角筋は重量を扱うのが難しい部位で、高重量からおこなうと肩がすくんでしまい、僧帽筋に負荷が流れてしまいます。
特に三角筋中部を鍛える際には、いかに僧帽筋に負荷が流れないようにするかがポイントです。無理をして高重量を扱うより、しっかりコントロールできるような重量で正しいフォームの筋トレをおこない、負荷が分散しないようにしてください。
上記で紹介したフロントレイズ・サイドレイズなどのレイズ系メニューでは、高重量を扱える人はそう多くありません。「迅速に効果を出したい」と高い重量を設定してしまうと、肩関節のケガにつながるリスクもあります。
トレーニングを始めて間もない人が高重量から始めてしまうと、フォームが安定せず負荷が効きにくいことも珍しくありません。三角筋トレーニングでは、最初の重量設定は軽めにするよう心がけてください。
10~20回の高回数できているか
三角筋は回数が多いトレーニングに反応しやすく、高回数で筋肉が発達しやすい傾向があります。3~5回ほどの負荷が強めの高重量トレーニングより、10~20回程度の回数の多いトレーニングのほうが筋肥大につながりやすいでしょう。
以下の記事で山本義徳先生が三角筋の筋トレメニューに関して解説しています。ぜひ参考にしてください。
まとめ
三角筋が期待どおりに肥大しない場合、間違ったフォームで筋トレしていたり負荷不足だったりする可能性があります。三角筋を構成する前部・中部・後部がそれぞれ鍛えられていないなどの原因も考えられるでしょう。
三角筋は3つの部位で構成され、それぞれ鍛え方が違います。部位別に適した筋トレメニューを組み、しっかりと丁寧なトレーニングをおこなうと良いでしょう。
それでも効果が出ない場合、「高重量を先におこなっていないか」「10~20回ほどの回数できているか」など、メニューの取組み方を見直してください。一つひとつ筋トレの方法を見直して行くことで、三角筋の筋肥大を目指せるはずです。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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