アームカールとは、ダンベルやバーベルを持って肘の曲げ伸ばしを行い、力こぶの筋肉を鍛えるウエイトトレーニングの種目です。一見、ただ肘を曲げるだけというシンプルな種目ですが、細かなポイントを意識することで、より効果を高めていくことができます。
この記事では、山本義徳先生がアームカールの行い方と効果を高める方法について解説します。
アームカールで鍛えられる筋肉
アームカールといえば、上腕二頭筋の種目として有名です。
実はその他にも、上腕の深層に付着する上腕筋や、前腕の筋肉である腕橈骨筋も鍛えることができる種目でもあります。
上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)
力こぶを作る筋肉として知られる上腕二頭筋は、肩関節と肘関節の2つの関節をまたぐ二関節筋です。起始部は、長頭と短頭の2つに別れています。そして、前腕の橈骨に付着していおり、前腕を回外させた状態での肘関節の強力な屈筋として働きます。
起始と停止
筋の両端をそれぞれ起始(きし)と停止(ていし)と呼びます。一般的には、収縮するときに関節の動きが小さい方が起始、大きい方が停止とされています。
起始
長頭:肩甲骨の関節上結節(かんせつじょうけっせつ)
短頭:烏口突起(うこうとっき)
停止
橈骨粗面(とうこつそめん)と上腕二頭筋腱膜(じょうわんにとうきんけんまく)
作用
肘関節の屈曲(肘を曲げる動作)
前腕の回外(前腕を外に向かって捻る動作)
肩関節屈曲の補助(肩関節を前に向かって上げる動作)
上腕筋(じょうわんきん)
上腕筋は上腕二頭筋の下に付着しているため、表面から触れられる筋肉ではありません。しかし太い腕を作る上では上腕筋のボリュームも不可欠です。上腕筋は前腕の尺骨に付着しており、前腕が回外・回内いずれの位置にあっても働きます。より上腕筋を鍛えたい場合は、親指を前に向けたまま(回内)肘を曲げるハンマーカールを行うと良いでしょう。
起始
上腕骨中部前面(じょうわんこつちゅうぶぜんめん)
停止
尺骨粗面(しゃっこつそめん)
作用
肘関節の屈曲
腕橈骨筋(わんとうこつきん)
腕橈骨筋は、前腕の太さを形作る筋肉です。親指を前に向けた状態で行うハンマーカールを行うことで効果的に鍛えることができます。
起始
上腕骨外側下部(じょうわんこつがいそくかぶ)
停止
橈骨茎状突起(とうこつけいじょうとっき)
作用
肘関節の屈曲
前腕の回外
前腕の回内(前腕を内側にむかって捻る動き)
アームカールのやり方
アームカールは伸ばした肘を曲げるという、シンプルな種目です。しかし、狙う筋肉や目的に応じてやり方を変えることで、効かせる場所や負荷が強くかかるタイミングを変えたりすることができます。
アームカール
1.両手にダンベルを持ち、親指を前に向けた状態で立つ
2.肘を支点として、ダンベルが円運動をするような軌道であげる
3.ダンベルを上げながら、手の平を上に向けていく
注意点
肘は動かさず固定して、動きの支点となるようにしましょう。僧帽筋や三角筋などに負荷が逃げずに、集中的に上腕二頭筋と上腕筋を刺激することができます。
ハンマーカール
前腕を回外させずに親指を前に向けたままアームカールの動作を行うと、ハンマーカールと呼ばれる種目になります。前腕が回内の位置まま動作を行うため、より上腕筋を鍛えることができます。前腕が回内した位置では上腕二頭筋の機能が制限されるためです。
インクラインダンベルカール(インクラインカール)
インクラインカールでは、角度をつけたベンチを用いてダンベルカールを行います。筋肉を発達させるために1番大切なのは、ストレッチの位置で刺激を与えることです。インクラインカールでは、スタートポジションで肩関節が伸展した状態です。通常のアームカールでは与えることのできない、ストレッチ刺激を与えることができます。
1.角度をつけたベンチに座り、親指は前に向け、腕を垂直の位置でストレッチさせる。
2.肘を支点として、手の平を上に向けながらダンベルを上げていく。
3.戻して肘を伸ばしきる。
アームカールのトレーニング頻度
これからアームカールを始める人は、まずは次のような頻度・回数で行うと良いでしょう。
頻度
週2回
回数
15回
セット数
3セット
トレーニングに慣れるにつれて、アームカールの強度も高くなります。さらに別の部位のトレーニングとの兼ね合いも考えて、オーバーワークを避ける必要もあります。
どのくらいの頻度で行うべきかは、こちらの分割法の記事が参考になるでしょう。
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また、上腕二頭筋のトレーニングにおいては、高重量を扱うよりも軽めの重量で行なった方が筋肥大の効果が高かったという研究結果があります。
参考:Effects of Rest Intervals and Training Loads on Metabolic Stress and Muscle Hypertrophy
普段は軽い重量で丁寧なアームカールを行い、筋力を低下させないために、定期的に高重量でのアームカールを行なっていくなどの工夫をしてみてください。
上腕二頭筋の長頭と短頭の鍛え分け方
上腕二頭筋には、長頭と短頭の2つの頭があります。肘を曲げる際に、前腕を捻る方向によって上腕二頭筋の使われ方が異なります。アームカールに慣れてきたら、長頭と短頭の鍛え分けを意識してみるのも良いでしょう。
長頭は上腕二頭筋の外側に位置しており、上腕二頭筋の力こぶのピークを形成しています。長頭は、前腕を内側に捻ったまま(回内)肘を曲げるときに強く働きます。ハンマーカールは、親指を前に向けた回内の状態でカールを行うため、上腕二頭筋においては長頭が強く働きます。手幅を狭くして持つナローグリップのバーベルカールや、持ち手に角度がついたEZバーを用いたカールでも同じことが言えます。
短頭は上腕二頭筋の内側に位置しており、特に前から見たときの腕の太さを担っています。短頭は、前腕を外側に捻りながら(回外)肘を曲げるときに強く働きます。肘は閉じ、手幅を広くして持つワイドグリップの状態でのバーベルアームカールは、上げたときに自然と前腕が回外した状態となるため、短頭への刺激が強くなります。
長頭(外側)が弱い場合は、ナローグリップやEZバーを使用したアームカール、あるいはハンマーカール
短頭(内側)が弱い場合は、ワイドグリップでのアームカールや、上げたときにダンベルを捻って前腕を回外させるアームカール
このようにして長頭と短頭を鍛え分けると良いでしょう。
まとめ
上腕二頭筋(長頭)には
→ハンマーカール・ナローグリップバーベルカール・EZバーカール
上腕二頭筋(短頭)には
→回外動作を行うダンベルカール・ワイドグリップバーベルカール
上腕筋には
→ハンマーカール
腕橈骨筋には
→ハンマーカール
狙う筋肉によって、それぞれ上記のトレーニングが効果的です。
アームカールは初心者でも効かせやすいため、簡単な種目であると思われがちですが、実は奥が深いことがお分かり頂けたでしょうか?ぜひ、目的に応じてさまざまななアームカールを使い分けてみましょう。
記事監修者 情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
静岡県出身の日本のボディビルダー、トレーニング指導者。
メジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家など幅広いクライアントを指導している。
2019年4月から投稿を始めたYouTubeチャンネル「VALX 山本義徳 筋トレ大学」を開設。
一般社団法人 パーソナルトレーナー協会 理事
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)(下)
【SNS】
X▶︎https://twitter.com/valx_official
Instagram▶︎https://www.instagram.com/valx_official/
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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