僧帽筋は首・肩・背中に広がっており、上部・中部・下部の3ブロックに分かれています。姿勢を整えたり、肩甲骨を支えたりするのに重要な部位です。
この記事では、僧帽筋の構造と役割・ストレッチによる効果などを解説します。また、有名アスリートを指導する人気トレーナー山本義徳先生による「僧帽筋をほぐすストレッチ法」と「実施タイミング」もあわせて紹介します。読めばすぐに役立つ内容なので、ぜひご一読ください。
僧帽筋の構造と役割
最初に、僧帽筋の構造と各部位の役割を理解しておきましょう。
僧帽筋とは、首の根元から肩と背中にかけて広がる大きな筋肉です。背中側には何層もの筋肉が重なっていますが、僧帽筋は表層にあり、手で触れば簡単に動きが確認できます。
僧帽筋は姿勢の維持に重要な筋肉で、腕の働きを助けることで肩甲骨を正しい場所に安定させる役割を持っています。具体的に僧帽筋の場所は、後頭骨から頸部と、胸部背骨の突起部分から鎖骨・肩甲骨の突起部分までです。大きく分けると上部・中部・下部の3つとなり、それぞれ機能や役割が異なります。
僧帽筋・上部
僧帽筋の上部は首をすくめる動作など、肩甲骨・鎖骨を引き上げるときに使われる筋肉です。首からつながっているものの、筋肉的に力が弱く首の動きにはあまり関係していません。三角筋など、ほかの部位の筋トレでも使われやすい筋肉のため、意図的に鍛えなくても発達している人が多いようです。
僧帽筋・中部
僧帽筋の中部は肩甲骨を内側に向けるときや、上げるときに使う筋肉です。肩甲骨を寄せる・腕を伸ばすなどの動きの際にも使われます。背中の厚みを作りたい人は、特につけておきたい筋肉です。
僧帽筋・下部
僧帽筋の下部は肩甲骨の内転に加え、下制の動きもコントロールしています。肩甲骨を後方や下方に下げる動きを助け、背中の厚み形成にも欠かせない筋肉部位です。
僧帽筋を鍛えるメリット
以上のような役割を持つ僧帽筋を鍛えると、どのような効果があるのでしょうか。以下でメリットを紹介しつつ、僧帽筋のストレッチによる効果を解説します。
肩周辺が動かしやすくなる
僧帽筋は首や肩甲骨の動き全体に関わっており、意識して鍛えると肩周辺の動きが良くなります。デスクワークで同じ姿勢でいることが多い場合などは、肩甲骨が前に出た状態で硬くなって可動域が小さくなりやすいです。
そこで僧帽筋を鍛えることにより、うしろに引く力を強く伝えられ、肩周りを柔軟に動かせるようになります。頭部を支えている肩・首の負担も減り、肩周りがスッキリします。
身体を支えて均整の取れたプロポーションに
僧帽筋ががっちりしてくると、背筋が伸びて美しい姿勢をキープできるようになります。僧帽筋下部の筋肉が肩甲骨を内側に寄せ、肩が開いた状態になるからです。さらに背中の表面にある僧帽筋は、鍛えることでシルエット自体が変化し、プロポーションに良い影響を与えるでしょう。
肩こり・腰痛の軽減・予防
僧帽筋を鍛えると頭がしっかり支えられ、血流が良くなることで肩こり・腰痛を軽減できます。肩周りは動かさないと老廃物がたまり、血流が悪化します。新鮮な血液が循環しにくくなると、肩こり・腰痛・頭痛の原因にもつながるため注意が必要です。普段から意識をして僧帽筋のストレッチをすれば、良い姿勢をキープできるため、肩こり・腰痛の予防にもなります。
僧帽筋が硬くなる原因と症状、予防方法
僧帽筋が硬くなると、いくつかの症状が表れます。僧帽筋が硬くなるおもな原因と症状を解説するので、思いあたる点がないか日頃の生活を見直してみましょう。
原因1 姿勢の悪さ
パソコンやスマートフォンを長時間使っていると、無意識に首が下がったり背中が丸まったりして猫背になりがちです。猫背になると肩甲骨が外に向かって広がり、僧帽筋が常に緊張した状態になります。すると肩周辺の筋肉が硬くなり、肩こり・腰痛などの症状を引き起こしてしまいます。
原因2 筋肉の緊張
筋肉は緊張して疲れていると硬くなり、次第に筋肉内部の血管を圧迫し血流を悪くしてしまいます。血流が悪化して筋肉に十分な栄養が届かなくなると「筋肉疲労」を起こすことにつながります。疲労の蓄積は筋肉をより硬くし、肩こりの原因となるため、ストレッチなどでやわらかくすることが大切です。
原因3 寒さ
寒いと感じると、肩をすくめて身体に力が入りやすくなります。肩に力が入った状態が続いた場合も僧帽筋が緊張して血行不良を起こし、筋肉疲労・肩こりにつながるため要注意です。
原因4 ストレス
精神的ストレスによる緊張も、長期間続くと僧帽筋を硬くしてしまう原因になります。加えてストレスで自律神経が乱れることで、肩以外に背中・首にも痛みが出るおそれがあります。
僧帽筋が硬くなって起こる肩こりを予防するには
僧帽筋が硬くなることで起こる肩こりを予防するには、以下3つの方法があります。
- 長い時間同じ姿勢を続けない
- 肩・首の「冷え」に注意して血流を良くする
- ストレッチをする
長い時間同じ姿勢でいる・肩を冷やすことによる血流の悪化を防ぐには、適度な運動やストレッチが最適です。以下で、自宅でも簡単にできる僧帽筋ストレッチのやり方を解説するので、取入れてみてください。
ゆっくりほぐす!僧帽筋ストレッチのやり方
自宅で簡単にできる僧帽筋ストレッチですが、ポイントや注意点もあります。あらかじめ知っておかないと効果を実感しにくくなるため、ストレッチ前に把握しておきましょう。
ポイントや注意点を解説したあとに、上部・中部・下部それぞれのストレッチ方法を山本義徳先生が伝授します。
ストレッチのポイントと注意点
僧帽筋ストレッチは15~20秒ほどかけてゆっくりおこない、呼吸を止めないように意識してください。呼吸を止めずにストレッチをすることで、筋肉が緩みやすくなるからです。反動をつけた動きは、首・肩周辺の筋肉を緊張させてしまうリスクがあります。反動をつけずに、じっくり筋肉を伸ばしましょう。
上部・中部・下部すべてのストレッチをおこなっても、所要時間はわずか数分です。時間がないときでも手軽にでき、効果を感じやすいストレッチのため「簡単でスッキリすること」が実感できるでしょう。
ただし、スポーツやアクシデントなど、何らかの事情で肩を痛めている場合のストレッチはNGです。決して無理をせず、安静に過ごしてください。
僧帽筋上部のストレッチ
片方の腕を身体のうしろにまわし、手で頭を軽く抱えます。頭をゆっくりかたむけて、首をまげた状態で呼吸をしながら15~20秒キープしてください。
僧帽筋中部のストレッチ
肩幅に脚を開いて立ち、腕を前に伸ばして手を組みます。その状態で肩甲骨を広げ、腕のなかで大きなボールを抱えるようなイメージで首・背中を丸くし、呼吸をしながら15~30秒キープしましょう。
僧帽筋下部のストレッチ
椅子に腰かけて両手を両膝の上に置き、背筋を意識して伸ばしましょう。右手で右膝を押しながら左側に身体をまわし、呼吸をしながら15~20秒キープします。反対側も同じように動いてください。
ベッドで寝ながらでもできる僧帽筋ストレッチ
僧帽筋ストレッチには、3ステップでできる簡単な方法もあります。ベッドで寝ながらでもできる方法のため、以下の流れで試してみてください。
1. 後頭部のうしろで手を組み、まっすぐ前に首を引っ張ります。「首から背中にかけて伸びている」と感じたら、60秒キープします。
2. 次に首を右側にかたむけて「背中の左側が伸びている」と感じたら、そのまま60秒キープします。
3. 同様に、首を左側にかたむけ、背中の右側を伸ばします。
上記のストレッチは、3分あればできる方法です。思い立ったらすぐに実践でき、こりをほぐす効果や気持ち良さを感じられるでしょう。
僧帽筋ストレッチをするべきタイミングはいつ?
僧帽筋のストレッチはどのようなタイミングでおこなうと良いのか、オススメのタイミングを紹介します。
起床後や就寝前
ストレッチは寝起きの身体を目覚めさせてくれるため、起床後におこなうと良いです。目覚めの僧帽筋ストレッチは、一日のスタートを気持ち良くサポートしてくれるでしょう。起床後だけではなく、就寝前に僧帽筋ストレッチをおこなうのもオススメです。ストレッチによって筋肉の緊張がほぐれ、リラックスした状態で眠りにつけるでしょう。
先ほど紹介した3ステップの僧帽筋ストレッチなら、ベッドに寝ながらでもおこなえるため、取組んでみてはいかがでしょうか。
トレーニング後
僧帽筋ストレッチは、トレーニング後におこなうのも良いタイミングとなります。なぜなら、トレーニングで傷ついた筋肉繊維をゆっくり伸ばすことで、筋肉の短縮を防止する効果が期待できるからです。
僧帽筋ストレッチはゆっくり筋肉を伸ばす「静的ストレッチ」のため、血流が良くなって身体のすみずみまで栄養を行き渡らせられます。筋肉をゆっくり伸ばして交感神経の働きを抑え、副交感神経の働きを優位にしましょう。
なお、トレーニング前に静的ストレッチをおこなうと、身体がリラックスして筋力低下をまねくおそれがあります。そのためトレーニング前には僧帽筋ストレッチを控え、ラジオ体操のような関節の可動域を広げる「動的ストレッチ」をおこないましょう。
仕事の合間
デスクワークなどで同じ姿勢が一定時間続いたときは、休憩時にストレッチをして僧帽筋をほぐしましょう。ストレッチで血液の循環が良くなれば気分もリフレッシュでき、仕事の生産性アップにつながるかもしれません。
ストレッチに関しては、以下の記事でも山本義徳先生が解説しています。
まとめ
僧帽筋は上部・中部・下部の3ブロックから構成され、それぞれ役割が異なります。姿勢の悪さ・筋肉の緊張・寒さ・ストレスによって僧帽筋が硬くなると、肩こりなどの症状を引き起こす原因になります。
上記の症状を軽減・予防するために、仕事の合間・起床前後・運動後など、タイミングを意識して僧帽筋ストレッチをしましょう。ポイントは呼吸を止めないことで、15~20秒または60秒ほどかけてゆっくりおこないます。手軽にリフレッシュもできるため、日々の生活のなかで取入れてみてください。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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