上腕二頭筋と聞けば、力こぶを想像する人が多いでしょう。「太くてかっこいい上腕二頭筋を手に入れるためには、筋トレと同時にストレッチで疲労をいやすことも重要です。
上腕二頭筋は良く使われるため、疲労がたまりやすい筋肉です。トレーニーではない人も日常的にストレッチを取入れることをオススメします。
この記事では、上腕二頭筋の基礎知識と、誰でも簡単にできる上腕二頭筋ストレッチメニューを紹介します。トレーナー界のレジェンド・山本義徳先生が解説しますので、ぜひ参考にしてください。
上腕二頭筋とは?
はじめに、上腕二頭筋の構造と働きを説明します。
上腕二頭筋は肩の前側から上腕をとおり、前腕まで続く筋肉です。おもに肘を曲げるときに働き、力こぶをつくります。重い荷物を持ち上げたり、腕相撲の際にこらえたりする際、大きなパワーを出すことが可能です。肩関節をこえて肩甲骨にも付着しているため、腕をバンザイする動きにも参加します。
上腕筋二頭筋は以下、長頭と短頭の2つに分かれて走行しており、それぞれに構造・役割が異なります。
上腕二頭筋・長頭
上腕の外側を走行する長頭は、前腕の外側にある橈骨(とうこつ)と呼ばれる骨に付着します。手のひらを床に対して垂直に肘を曲げるときに働きます。
上腕二頭筋・短頭
上腕の内側を走行する短頭は、前腕の中央に付着します。手首を外側にひねることを回外といい、手のひらを上向きにして、回外させる動作のときに強く働きます。
上腕二頭筋をほぐす3つの効果・メリット
上腕二頭筋はトレーニングしている人だけでなく、日常生活で良く使われる筋肉であり、疲れがたまりやすいことが特徴です。しっかりほぐして疲労を残さないようにしましょう。ここでは筋肉をほぐすことで得られる3つの効果・メリットを解説します。
ケガをしにくくなる
上腕二頭筋で良くみられるケガの一つが、上腕二頭筋腱損傷です。野球の投球やテニスのサーブなどオーバーハンド(球を投げたり打ったりする際、腕が肩より上にあがること)スポーツで起こりやすいケガで、筋肉と骨をつなぐ腱が損傷します。急に重いものを持ち上げて、力に耐え切れず損傷する場合もあります。
筋肉の末端にある腱は、筋肉が生み出した力を反射的に伝えて、関節を動かします。もし上腕二頭筋が凝り固まっていると、腱への負担が高まり、肘関節・肩関節での炎症が起こります。
ケガを予防するにはストレッチが効果的です。上腕二頭筋のストレッチをおこなうと、肘関節・肩関節の可動域を保つことができます。関節の動きもスムーズになり、運動のパフォーマンス効果を高められます。
二の腕が引き締まって見える
ストレッチは、血液循環やリンパの流れを改善できます。上腕二頭筋は腕のなかで大きい筋肉で、ストレッチをしておくことで血行が良くなり、浮腫を防止できます。引き締まった二の腕を目指したい人は、上腕二頭筋のストレッチがオススメです。
疲労がたまりにくくなる
運動の際、筋肉を動かすエネルギーとして使われる糖は分解されると乳酸が発生します。運動により乳酸が多く作られると、その過程で発生する水素イオンの影響で、筋疲労が起こるとわかっています。運動量が多いとエネルギー源である糖の蓄えが減少し、疲労が蓄積します。
疲労をそのままにしていると、筋肉が凝り固まってしまいます。ストレッチをして血液循環を促すと、疲労がたまりにくくなり、筋肉の柔軟性を保てます。
上腕二頭筋のストレッチはこんな人にオススメ
上腕二頭筋のストレッチをオススメしたい人を紹介します。当てはまる人は、積極的にストレッチでほぐしていきましょう。
パソコンやスマートフォンを良く使う人
パソコンやスマートフォンを長時間使う習慣がある人は、筋肉に疲労がたまりやすく、凝り固まってしまいます。肘を曲げたまま関節を動かさないでいると、血液の循環が悪くなり、凝りが生じてしまうので注意しましょう。
定期的にストレッチをし、筋肉のポンプ作用により血液循環を促すことが重要です。
上腕二頭筋の筋肉量が少ない人
上腕二頭筋の筋肉量が少ない人もオススメです。同じ重さの荷物を持っても筋肉量の多い人と比べて、耐えられる負荷量が少ないため、筋肉の疲労がたまりやすいからです。
ストレッチで柔軟性と血液循環を高め、筋肉の疲労がたまりにくい状態に改善しましょう。
上腕二頭筋をトレーニングしている人
上腕二頭筋をトレーニングしている人には、ウォーミングアップとして、ラジオ体操やブラジル体操などのダイナミック(動的)ストレッチがオススメです。
トレーニング前に、筋肉の伸び縮みをくり返すダイナミックストレッチをおこなうと、柔軟性の向上やウォーミングアップ効果が期待できるでしょう。神経から筋肉へスムーズに命令が伝達され、すぐに反応できる準備状態を作ってくれます。
トレーニング後はスタティック(静的)ストレッチで疲れをとりましょう。20秒程度ゆっくり伸ばすと、傷ついた筋肉を早く回復できます。
上腕二頭筋のストレッチ種目3つ
疲れがたまりやすい上腕二頭筋は、日常的にストレッチすることが大切です。
ここでは、「誰でも簡単にできる上腕二頭筋ストレッチ」を山本義徳先生が伝授します。
立ってできる上腕二頭筋ストレッチ
上腕二頭筋と大胸筋も一緒にストレッチできる方法です。
1. 後ろに手に組んで上体を前屈させる
2. 肘を伸ばしたまま腕を床のほうに下ろしていく
3. 息をゆっくり吐きながら20~30秒程度キープする
腕を床のほうに下ろした状態で上体を左右にひねると、大胸筋もストレッチされます。
床でできる上腕二頭筋ストレッチ
床の上でできる上腕二頭筋のストレッチメニューです。
1. 四つ這いの姿勢から、右腕を外側に90度広げて手をグーにして床につける
2. 右腕の肘を伸ばしたまま、上体を下げて右肩を床にひねって行く
3. 息をゆっくり吐きながら、20~30秒程度キープする
4. 反対の腕(左腕)も同様におこなう
余裕がある人は、伸ばした手を台に置いてストレッチをおこなうと、さらに負荷がかかります。
椅子を使ってできる上腕二頭筋ストレッチ
上腕二頭筋は回外の作用があるため、逆の回内くらいでストレッチすると効果的です。
1. 椅子の前に両脚を伸ばした状態で座る
2. 片腕を後ろに伸ばし、椅子の上に置く
3. 手のひらは天井を向いた状態にして、後ろに伸ばした腕を回内する
4. 背中を丸めないよう気をつけながら身体を前傾し、後ろに伸ばした腕を伸ばす
5. 息を吐きながら20~30秒程度キープする
息を吐く際はゆっくり長くおこないと、身体を前傾しやすくなります。
上腕二頭筋ストレッチの注意点
上腕二頭筋ストレッチをおこなう際の注意点を解説します。
呼吸を止めずにストレッチ
ストレッチの際は、呼吸を止めると身体が力んでしまい、効果が半減します。息を止めることで血圧の上昇が起こり、身体へ負担がかかります。自然な呼吸を続け、リラックスすることが大切です。
反動をつけずにゆっくりと
反動をつけ、勢い良くストレッチをおこなうと、急激に筋肉が伸びて傷ついたり、柔軟性を低下したりする可能性があります。呼吸に合わせてゆっくりストレッチをしましょう。
痛くない範囲でストレッチ
痛みを感じるほど伸ばすことを「オーバーストレッチ」といい、筋肉を傷める原因になります。心地良く伸びを感じる程度にとどめることがポイントです。
伸ばしている筋肉に意識を向ける
ストレッチの際は、伸ばしている筋肉を意識しましょう。上腕二頭筋に関係する神経・関節・靭帯などの調和がとることができます。
ウォーミングアップではスタティック(静的)ストレッチはおこなわない
今回、紹介したストレッチは筋肉の疲労や柔軟性アップを目的とした上腕二頭筋のスタティック(静的)ストレッチです。運動前におこなうと筋肉が伸びすぎてしまい、良いパフォーマンスが得られにくいとされています。ウォーミングアップとしておこなうなら、ダイナミック(動的)ストレッチがオススメです。
まとめ
上腕二頭筋は、日常生活で良く使われる筋肉です。疲労をためず、柔軟性を保つことでケガの予防につながります。
目的に応じてストレッチ方法を工夫することで、リラクゼーション効果や運動のパフォーマンス向上をもたらします。
無理なく、心地良さを感じる程度に伸ばしながらストレッチしてください。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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