バルクアップを成功させる上で、栄養をしっかりと摂ることが重要なのは、もはや常識でしょう。しっかりとした食事を摂っていることを前提として、バルクアップのトレーニングにはおさえておきたいポイントがあります。
そして減量中でも、トレーニングの頻度と時間を変えることで、効率よく脂肪を落としていくことができます。それぞれの方法と注意点を山本義徳先生が解説します。
バルクアップのためのトレーニング
トレーニングを行うと、その刺激によりmTOR(エムトール)という、細胞の成長を調節するシグナル伝達経路が活性化します。筋タンパクの合成、つまり筋肉の成長は、mTORが活性化することにより始まります。
そしてmTORを活性化させ筋肉量を増やしていくためには、適切な量のトレーニングによる適度なストレスを与えることが重要です。身体にとって、これはストレスであると感じられる刺激であれば十分です。それ以上の刺激はバルクアップにとって意味がないどころか、逆効果にもなってしまいます。
その人の筋肉の能力が100だとしたら、101の刺激を与えれば十分に筋肉は発達して行きます。それ以上に強い刺激を与えてしまうとむしろ回復が遅くなり、筋肉はなかなか発達しません。
これが山本先生が提唱する、筋肉を発達させるためのトレーニング理論である「101理論」の考え方です。
多くの人がハードにトレーニングを行い、筋肉へのダメージが強すぎることに気がついていません。強すぎる刺激を与えたからといって、筋肉の発達も比例して強くなるわけではないのです。
トレーニングの次の日に筋肉痛が来ていたら、101以上の刺激を与えることができていると考えて間違いありません。でも筋肉痛が何日も続いて治らない場合は、刺激が強すぎます。そのような人の場合は、セット数を減らす・追い込みすぎない、といった対策を行うことで逆に筋肉が発達する可能性があります。
バルクアップと減量のトレーニングは変えるべき?
バルクアップのトレーニングと減量のトレーニングでは、変えてはいけないポイント、そして変えた方が良いポイントがあります。
トレーニングの重量は変えてはいけない!
バルクアップのときも減量のときも、トレーニングで扱う重量は変えてはいけません。
減量期に入ると、脂肪燃焼効果を期待して軽い重量で何回も上げるようなトレーニングをする人もいます。しかしそのトレーニングを続けると、筋肉量が落ちてしまう原因となります。
トレーニングの重量を下げると筋肉量が落ちてしまう原因は、使われるモーターユニットが減ってしまうためです。
モーターユニットとは?
1本の神経と、その神経が支配している筋繊維の事をさす単位。筋肉の部位によって1本の神経が支配する筋繊維の数は異なります。
筋力、そして筋肉のサイズを大きく保つには、多くのモーターユニットを同時に働かせなくてはなりません。多くの筋繊維が同時に動く状態に神経と筋肉を適応させておくことで、筋肉量が落ちるのを防ぐことができます。
軽い重量でのトレーニングでも回数を多くこなせば、確かに限界まで追い込むことができます。上げる回数が多いぶんトレーニングもキツくなり、しっかりと筋肉を刺激することができたような感覚もあることでしょう。
しかし、重量を軽くしてしまうと一度に使われるモーターユニットの数が減り、結果的に動員される筋繊維も減っていることを忘れてはいけません。
減量中はエネルギーが不足しやすく、筋肉が分解されやすい状態です。その中でもできるだけバルクアップの時と同じ重量を扱うことで、筋肉量の減少を防ぎましょう。
減量ではトレーニング頻度を多くする
バルクアップ中、そして減量中であってもトレーニングの重量を減らしてはいけないことはお分かり頂けたかと思います。しかし、バルクアップ中と減量中のトレーニングで変えるべき点もあります。
それはトレーニングの頻度です。
バルクアップ中のトレーニング頻度
バルクアップのときに大切なのは、いかに身体を回復させるかということです。101を遥かに超える強い刺激を与えないことはもちろん、トレーニングの頻度も少なめのほうが良いのです。
筋肉は休んでいるときに発達します。いかに身体を休めてあげるかが、バルクアップのポイントです。
身体の細胞は、常に合成と分解を繰り返しています。筋肉を増やすためには、分解を抑えて合成を増やすことが大切です。せっかくトレーニングによって合成が高まっても、休養が足りないことにより分解も高まってしまうと、いつまでたっても筋肉量が増えることはありません。
バルクアップ期の1回のトレーニング時間は、1時間から1時間30分を目安に、長めに行なっても大丈夫です。その代わりに週2日あるいは3日は完全休養の日を取り入れましょう。
減量中のトレーニング頻度
減量中は多くのカロリーを消費するために、常に代謝を高く保つことが必要になります。そのためにはトレーニングの頻度を多くすることが有効です。
例えば1回2時間のトレーニングを週3回行うよりも、1回1時間のトレーニングを週6回行なった方が消費カロリーは多くなります。
運動を行なった後は、酸素が普通よりも多く消費され代謝の高まった状態が24~36時間ほど続きます。トレーニングの頻度が多い方が、代謝が上がっている時間が長くなるので、トータルで消費されるカロリーも多くなるということです。
また、トレーニングを行うことによって成長ホルモンの分泌も促されます。成長ホルモンは体脂肪の燃焼にはとても効果があります。成長ホルモンが分泌されるタイミングを増やすという意味でも、高頻度のトレーニングが減量には有効であることが言えます。
減量中は週5~7回の高頻度のトレーニングを行いましょう。その代わり1回のトレーニング時間は30分ほどで十分です。
オーバーワークに気をつけよう!
101を遥かに超える強い刺激を与えてしまったり、高頻度で行うことによるオーバーワーク(やりすぎ)には注意が必要です。
オーバーワークとは?
トレーニングのセット数やトレーニング頻度が多くパフォーマンスが伸びなくなっている状態、あるいは低下してしまっている状態のこと
関連記事:オーバーワークとは?避ける方法を山本義徳先生が解説
高強度・長時間のトレーニングを、高頻度で行なってしまうと間違いなくオーバーワークに陥ってしまいます。オーバーワークになって身体が疲れてしまうと、逆に減量がうまく進みません。
だからこそ、減量中のために高頻度のトレーニングを行う際は、1回のトレーニング時間を短くする必要があるのです。
まとめ
バルクアップをするためには、トレーニングをやりすぎて筋肉に強すぎる刺激を与えていないかに気をつけましょう。そしてバルクアップ中と減量中のトレーニングの違いのポイントを押さえることで、オーバーワークを避けて、より効率よく身体作りをすることができます。
・減量中であっても、トレーニングの重量は減らさない
・バルクアップ中は、週2~3日は完全休養の日を設ける
・減量中は1回30分で、週5~7回の高頻度のトレーニングを行う
記事監修者 情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
静岡県出身の日本のボディビルダー、トレーニング指導者。
メジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家など幅広いクライアントを指導している。
2019年4月から投稿を始めたYouTubeチャンネル「VALX 山本義徳 筋トレ大学」を開設。
一般社団法人 パーソナルトレーナー協会 理事
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)(下)
【SNS】
X▶︎https://twitter.com/valx_official
Instagram▶︎https://www.instagram.com/valx_official/
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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