トレーニング

ラットプルダウンで逆三角形の背中を作る!山本義徳先生が解説

盛り上がった背筋、かっこいい逆三角形のボディを手に入れたい。誰もが一度は思ったことがあるのではないでしょうか。背中のトレーニングの定番種目であるラットプルダウンをより理解することで、憧れの身体に近づくことができるでしょう。

この記事では、筋肉博士の異名をもつ山本義徳先生が、正しいラットプルダウンのやり方や鍛えられる筋肉について解説します。

ラットプルダウンとは

ラットプルダウンとは、ジムに設置されているケーブルマシン、あるいはラットプルダウン専用のマシンを用いておこなう、背中の筋肉を鍛えるためのウエイトトレーニングの種目です。

初心者がやるべき種目として挙げられることが多いものの、関節の構造上どうしても背中以外の腕などの筋肉も使ってしまうため、背中の筋肉だけを正確に鍛えるのが難しい種目でもあります。次に紹介するフォームを参考に、ラットプルダウンをより効果的におこないましょう。

ラットプルダウンのやり方

1.ケーブルに取り付けられたバーを両手で握り、バーの下に骨盤を立てて座る

2.胸をはった状態でバーを自分の胸に向かって引く

3.ゆっくりとバーを戻す

ラットプルダウンで鍛えられる筋肉

ラットプルダウンで鍛えることができるのは、主に背面から見ることのできる上半身の筋肉です。いわゆる逆三角形と表現される体型を作るのために重要な広がりと厚みをもたらします。

起始と停止
筋肉の両端をそれぞれ起始(きし)と停止(ていし)と呼びます。一般的には、筋肉が収縮するときに関節の動きが小さい方が起始、大きい方が停止とされています。ターゲットとなる筋肉がどこに付着しているか意識しすることで、より効果的なトレーニングを行うことができます。

広背筋

広背筋

広背筋は、脇の下から骨盤にかけて付着する、上半身の逆三角形を作るために特に重要な筋肉です。

起始

第7腰椎〜第5腰椎
腸骨稜(ちょうこつりょう)後面・仙骨(せんこつ)後面
第10〜12肋骨

停止

上腕骨の小結節稜(しょうけっせつりょう)

作用

肩関節の内転
肩関節の伸展
肩関節の内旋

大円筋

大円筋は広背筋の上部に付着し、広背筋と一緒に働く筋肉です。より大円筋に効かせたい場合には、わざと肩甲骨を固定して引く動作をおこなう場合もあります。

起始

肩甲骨下角後面(けんこうこつかかくこうめん)

停止

上腕骨の小結節綾(しょうけっせつりょう)

機能

肩関節の伸展
肩関節の内旋
肩関節の内転

僧帽筋

僧帽筋

僧帽筋は、背中に全体的に覆いかぶさるように付着している面積の大きな筋肉です。広背筋が背中の広がりを作るのに対して、僧帽筋は背中の分厚さを作り出します。

起始

上部:後頭骨(こうとうこつ)
中部:第7頚椎・第1〜3胸椎
下部:第4〜12胸椎

停止

上部:鎖骨の外側後面1/3
中部:肩峰内側縁(けんぽうないそくえん)と肩甲棘上縁(けんこうきょくじょうえん)
下部:肩甲棘(けんこうきょく)内端

作用

上部:肩甲骨の挙上(きょじょう)
中部:肩甲骨の挙上・内転・上方回旋
下部:肩甲骨の下制(かせい)・内転・上方回旋

上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)

上腕二頭筋

ラットプルダウンでは肘関節の屈曲動作により、背中の筋肉だけではなく上腕二頭筋も強く働きます。

起始

長頭:肩甲骨の関節上結節(かんせつじょうけっせつ)
短頭:烏口突起(うこうとっき)

停止

橈骨粗面(とうこつそめん)と上腕二頭筋腱膜(じょうわんにとうきんけんまく)

作用

肘関節の屈曲
前腕の回外
肩関節屈曲の補助

ラットプルダウンとチンニングの違い

ラットプルダウンとほぼ同じ身体の動かし方をするため、似通った種目として知られているのがチンニングです。チンニングとはいわゆる懸垂のことで、バーを両手で握ってぶら下がり自分の身体を持ち上げる種目です。

関連記事:チンニング(懸垂)で男らしい上半身に!山本義徳先生が語る

チンニングは動きの軌道が不安定な種目のため、体勢を安定させるためにさまざまな筋肉が多く使われます。より多くの筋肉が使われ、筋肉への刺激が強いという点ではチンニングの方が効果的であると言えます。

しかし、チンニングは自分の体重を持ち上げなくてはいけないため、筋力が相当ある人でないと難易度の高い種目です。それに対してラットプルダウンは自由な重量設定をおこなうことができ、筋力に合わせた負荷をかけることができます。

また、ラットプルダウンはシートに座り骨盤を固定するため、より骨盤の方に近い広背筋下部を刺激しやすい場合もあります。そしてシートに座る位置や上半身の角度を変えることで、腕を引く軌道の微調整をすることができ、使う筋肉をコントロールすることもできます。

ラットプルダウンのグリップの使い分け

ラットプルダウンには、手の握りかたによってさまざまなバリエーションがあります。オーバーグリップ(順手)で握る場合、肩関節においては内転の動作が大きくなります。逆にアンダーグリップ(逆手)でおこなうと、今度は伸展の動きが大きくなります。

オーバーグリップで握り、内転の動作で引くと肩甲骨が内側に向かって動くため、広背筋だけでなく、僧帽筋の中下部も使われます。アンダーグリップで握り伸展の動作で引くと、僧帽筋があまり関与せず、広背筋にだけを集中的に鍛えることができます。

そして、広背筋には腕を内側に捻る内旋という作用があります。オーバーグリップで握ることで内旋が強くなるため、広背筋の収縮はより強くなります。逆に腕を外側に捻る外旋の動きで広背筋は伸びるため、よりストレッチを重視したい場合はアンダーグリップが効果的です。

アンダーグリップで握る場合は、バーを握る手の幅が狭いと上腕二頭筋の関与が強くなってしまいます。広背筋に効かせたいのであれば、広い手幅でバーを持つと良いでしょう。

参考動画:背中のトレーニングの際に注意するべきグリップの違いとは?

まとめ

ラットプルダウンを正しいフォームでおこなうことで、広背筋を始めとした背中の筋肉を効果的に鍛えることができます。またラットプルダウンは、懸垂よりも動作の軌道をコントロールしやすいため、グリップや手幅を変えることでも背中の筋肉を鍛え分けることもできます。

・オーバーグリップ :広背筋と僧帽筋どちらにも効かせやすい。広背筋をより収縮させることができる。

・アンダーグリップ :広背筋に集中して効かせやすい。広背筋によりストレッチをかけることができる。

目的に合わせてグリップを使い分け、理想の体型を目指していきましょう。

監修者情報

山本義徳

山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。

一般社団法人 パーソナルトレーナー協会 理事

【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下) 
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる

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