懸垂(チンニング)は、自重を利用して広背筋を鍛えるトレーニングです。しかし、自重トレーニングとはいえ、強い負荷をかけられるのが特徴です。
一言で懸垂といっても、複数のバリエーションがあります。手幅・グリップの向きを変えておこなうのが、効率良く鍛えるコツです。
今回は、広背筋に効く懸垂のメニューを紹介します。狙った部位に効かせられない原因も解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
懸垂で鍛えられる筋肉とは?
懸垂(チンニング)で鍛えられる筋肉は以下の5つです。
・広背筋
広背筋は、脇の下から骨盤にかけてくっついている筋肉です。腕を真上にあげることでストレッチされます。
体幹部と腕の間での角度が大きくなるほど、強くストレッチされます。懸垂は腕を伸ばした状態からおこなうため、広背筋を鍛える種目として最適です。
・大円筋
大円筋は、肩甲骨にくっついている筋肉です。おもに肩関節での広背筋の動きをサポートします。
・僧帽筋
僧帽筋は、肩甲骨の動きをサポートする筋肉です。肩甲骨を上にあげたり内側に寄せたりする際に関与します。
・上腕二頭筋
上腕二頭筋は腕の前面上部に位置している筋肉で、力こぶと呼ばれます。長頭・短頭に分かれているのが特徴です。
・三角筋
三角筋は肩関節の動きを補助する筋肉で、前部・中部・後部に分かれています。懸垂で鍛えられる筋肉は、三角筋後部です。
懸垂は、複数の筋肉を同時に鍛えられる種目です。負荷も強いため、自重トレーニングでも筋肉の成長が十分期待できます。
懸垂で広背筋を鍛えるメリット
懸垂で広背筋を鍛えるのは、いくつかメリットがあります。あらかじめメリットを理解しておくのが、高いモチベーションでトレーニングするために大切です。
以下で3つのメリットを紹介します。
正しい姿勢になる
広背筋を鍛えると上半身が背中側に引っ張られ、正しい姿勢になります。
姿勢が悪いと背中が丸まり、猫背になります。
背中が丸まってしまう原因は、デスクワークなどで同じ姿勢を取り続けることだけではありません。背中の筋肉が弱いと、身体が前面に引っ張られてしまいます。
上半身の前面・背面で筋力が異なると、姿勢が悪くなります。胸だけでなく背中の筋肉もしっかり鍛えることで、姿勢改善につながります。
普段から姿勢が良くなれば、筋トレで正しいフォームを作りやすくなります。
腹筋を効率的に鍛えられる
広背筋のトレーニングは、腹筋を効率良く鍛えることにもつながり、間接的にシックスパックを作る手助けになります。
懸垂をおこなうと、広背筋・僧帽筋など多くの筋肉を鍛えられます。
一度に多くの筋肉を鍛えれば基礎代謝アップが期待できるため、お腹の脂肪も落ちやすくなるのがメリットです。
背中の筋肉を鍛えると、反対側に位置するお腹の筋肉を効率良く鍛えられます。前面・背面をしっかり鍛えるのが、身体のバランスを取るのに重要です。
逆三角形のシルエットになる
広背筋を鍛えると脇の下から腰にかけて筋肉がつくため、逆三角形のシルエットになります。
懸垂は広背筋だけでなく、大円筋・三角筋後部も鍛えられます。大円筋・三角筋後部も、身体のアウトラインを形作るのに大切な筋肉です。
身体の上側についている大円筋・三角筋後部が発達していれば、より逆三角形のシルエットが際立ちます。
懸垂をやり続ければ、身体の広がりが出てきます。逆三角形のシルエットに憧れる人ほど、懸垂をおこなって広背筋を鍛えましょう。
広背筋を鍛えられる懸垂メニュー
懸垂には、複数のバリエーションがあります。手幅・手の向きなどを変えることで、違った刺激を入れられるのが特徴です。
以下で5つの懸垂メニューを紹介します。すべてのメニューを取入れ、広背筋を効率良く鍛えましょう。
ナローチンニング
ナローチンニングとは、拳1個分程度の手幅でおこなう懸垂です。体幹部・腕の角度が大きくなるため、広背筋に強い刺激を与えられます。
1. 手のひらが向かい合うパラレルグリップを使用する
2. グリップに胸を近づけるイメージで、身体を持ち上げる
3. 身体をゆっくりおろす
ナローチンニングでは、上腕二頭筋にも強い負荷がかかります。オーバーワークにならないよう、ダンベルカールなど上腕二頭筋を鍛える種目のやりすぎに注意してください。
ワイドグリップチンニング
ワイドグリップチンニングでは、手幅を広くして動作をおこないます。
体幹部と腕の角度が小さくなるため、広背筋があまり関与しません。大円筋をメインで鍛えられるメニューです。
1. 手の甲が自分側を向くようバーを握る
2. 手幅を広く取る
3. 大円筋を意識しながら、身体を持ち上げる
4. 身体をゆっくりおろす
できるだけバーの端側を握ると、大円筋に効かせられます。ただし、腕の長さによってバーを握る位置が変わるため、自分に合った手幅を見つけるのが大切です。
順手懸垂
順手懸垂は、手の甲が自分側を向くようにグリップを握っておこないます。体幹部・腕の角度が大きくなるため、広背筋に強い刺激を入れられるのが特徴です。
1. 手の甲が自分側を向くよう、バーを握る
2. 手幅は肩幅より一握り広くする
3. 脚を後ろで組んで、お尻に力を入れる
4. 広背筋を意識しながら、身体を持ち上げる
5. 動作中は骨盤を前傾させ、身体を反らせる
広背筋と大殿筋はつながっているため、お尻に力を入れて骨盤を固定するのが大切です。骨盤をしっかり固定すると、広背筋が収縮しやすくなります。
片手懸垂
片手懸垂は名前のとおり、片手でおこなう懸垂です。片手で自分の体重を支えるため、ほかの懸垂メニューにくらべると負荷が高くなります。
1. 片手でバーを握る
2. 空いている手は、腰の後ろで組む
3. バーに顔を近づけるイメージで、身体を持ち上げる
片手懸垂が難しい場合は、ワンサイドチンニングがオススメです。
1. ワイドグリップでバーを握る
2. 片側だけ身体を持ち上げる
3. 4秒かけて身体をおろす
ネガティブ動作をゆっくりおこなうと、広背筋・大円筋に強い刺激を与えられます。
L字懸垂
L字懸垂は股関節を屈曲させておこなう懸垂です。大殿筋がストレッチされた状態になるため、より広背筋に効かせられます。
1. 順手もしくは逆手でバーを握る
2. 手幅は肩幅程度
3. バーにぶら下がったら、床と平行になるまで脚を上げる
4. バーにあごがつくまで身体を持ち上げる
5. 身体をゆっくりおろす
L字懸垂では、脚が下にさがらないよう意識します。脚を伸ばした状態がキツい場合は、膝を曲げても問題ありません。
股関節が屈曲した状態を維持しながら動作するのが、L字懸垂のポイントです。
懸垂が広背筋に効かない原因
懸垂で狙った部位が鍛えられない、そもそも懸垂ができないのには原因があります。原因を把握するのが、効率良くトレーニングするポイントです。
広背筋に刺激が入りにくい原因を、以下で5つ紹介します。
筋力が足りていない
筋力が足りていないせいで、広背筋に効かない可能性があります。懸垂は自重トレーニングですが、強度が高い種目です。
シートに座り骨盤を固定しておこなうラットプルダウンと異なり、下半身を固定できません。上半身の筋肉だけで自分の体重を持ち上げるため、相応の筋力が必要です。
懸垂は広背筋だけでなく、大円筋・上腕二頭筋などの筋肉も関与します。
1つの部位でも筋力が足りていないと、狙った部位に効かせられないだけでなく、自力で身体を持ち上げるのも難しくなります。
正しいフォームでできていない
正しいフォームで動作をおこなえなければ、広背筋に効かせられません。
一般的な懸垂では、大殿筋を緊張させるのが大切です。大殿筋と広背筋がつながっているため、お尻に力を入れて骨盤を固定させる必要があります。
下半身がふらつけば、広背筋から負荷が抜けてしまいます。
肩甲骨が動かず肩がすくんでしまうのも、正しいフォームとはいえません。肩甲骨を寄せ、胸を張った状態で動作をおこなうのが適切なフォームです。
体幹が鍛えられていない
体幹が鍛えられていないのも、広背筋に効かない原因です。体幹が鍛えられていないと、負荷が分散してしまいます。
懸垂は上半身の筋肉をまんべんなく鍛えられますが、体幹が弱いと動作が安定しないため、動作中身体がふらついてしまいます。
身体が動かないよう、お腹に力を入れるのが大切です。脚を後ろで組んでお尻に力を入れるのも、忘れないでください。
体幹をすぐに強くするのは困難です。スクワット・デッドリフトなどを取入れ、体幹を強化しましょう。
握力不足
握力が不足していると、懸垂で狙った部位に効かせられません。広背筋より先に握力が消耗するからです。
まずは、バーを強く握りすぎないよう意識しましょう。バーを握るより引っかけるイメージを持つと、握力の消耗を抑えられます。
親指を外してバーを握る、サムレスグリップもオススメです。バーに手を引っかけやすくなります。
リストストラップ・パワーグリップなどのアイテムも活用してみてください。握力が足りない場合でも、広背筋に効かせやすくなります。
体重が重い
体重が重すぎると、上手く懸垂ができない場合もあります。懸垂は、上半身の筋力だけで自分の身体を持ち上げるトレーニングです。
例えば、体重100kgの人にとって、自重での懸垂は負荷が強いトレーニングです。100kgの重りを扱っているのと変わりありません。
体重が重いだけでなく筋力が不足していると、ますます動作が難しくなります。
ある程度体脂肪を落としてからおこなうのが、オススメです。体重が数kg落ちるだけで、懸垂がやりやすくなります。
広背筋を効率良く鍛えるためにはたんぱく質の補給も大切!
広背筋を効率良く鍛えるには、たんぱく質の補給が欠かせません。トレーニング前後にプロテインを飲んでたんぱく質を補給するのが、筋肉を成長させる秘訣です。
以下でオススメのプロテインを紹介します。
『VALX ホエイプロテイン』
『VALX ホエイプロテイン』は味にこだわったプロテインです。チョコレート風味・ベリー風味・ヨーグルト風味・カフェオレ風味など、8つのフレーバーから選べます。
おいしいと思うプロテイン・飲み続けたいと思うプロテイン・溶けやすいと思うプロテイン・トレーナーが推奨するプロテインでNo.1を獲得したサプリメントです。
効率良く筋肉を成長させるため、プロテインは毎日飲む必要があります。しかし、味がおいしくなければ、飲み続けられません。
味だけでなく、飲みやすさにもこだわっています。水に溶けやすく、プロテイン特有の泡もできにくいのがうれしいポイントです。財布にも優しいため、コスパが良いプロテインを探している人にもオススメです。
プロテインは、以下の記事でも詳しく解説しています。
まとめ
懸垂は広背筋・大円筋・上腕二頭筋など上半身の筋肉を効率良く鍛えられる種目です。手幅・グリップの向きにより、さまざまなメニューがあります。
広背筋をメインで鍛えるなら、体幹部と腕の角度を大きくするのが大切です。バンザイして一握り分広くバーを握ると、広背筋に効きやすくなります。
動作中は脚を後ろで組み、お尻に力を入れます。骨盤を固定して広背筋を収縮させるのが狙いです。
正しいフォームで懸垂をおこない、逆三角形の身体を作りましょう。
監修者情報
山本 義徳(やまもと よしのり)
1969年静岡生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、ボディビルダーとして国内外の大会で活躍。世界2冠を獲得する等、数多くの優勝経験を持つ。その後、アスレティックトレーナーとしてメジャーリーガーやJリーガー、総合格闘家等幅広いクライアントへトレーニングおよび栄養指導を行う。2019年4月にトレーニングのノウハウや食事、ダイエットに関する情報を発信する『VALX 山本義徳 筋トレ大学』を開設し、登録者数72万人を突破。2024年8月には、更に深い知識やより細かいメカニズムを徹底解説した動画コンテンツ『筋トレ大学PRO』を新たに開設し、より上級者に向けたトレーニングや健康に関する情報を発信している。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
【You Tube】
山本義徳先生の知識と経験に基づいたトレーニング方法や、プロテインやサプリメントの情報を科学的根拠(エビデンス)に基づいて、YouTube動画を随時更新しています。
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